サントリーホール(東京・六本木/溜池山王)大ホール2006席
東京初のアリーナ型クラシック専用ホールです。日本初と思っている方も多いようですが、大阪のザ・シンフォニーホールの開館が1982年、こちらは1986年です。正確に述べると、ザ・シンフォニーホールはシューボックス型、サントリーホールはヴィンヤード型なので、「ヴィンヤード型でアリーナ型クラシック専用ホールとしては日本初」ということになります。サントリーグループが社運をかけて作り上げた「音響の良いホール」として、内外での知名度と格式の高さを誇ります。
サントリーホールをアマチュアで初めて利用したのは慶應ワグネル(慶應義塾ワグネル・ソサィエティー男声合唱団)の第111回定期演奏会でした。まだ開館から2か月しか経っていない1986年12月です。
初めて歌ったとき、最初はザ・シンフォニーホールでの経験を頭に描いて臨みましたが、残響が「長い」というより「多い」という印象でした。いろいろなところから反射された音があちこちから聞こえてくるのです。他のパートとアインザッツがきちんと合っているのか、歌っていて不安になってきてしまうのです。
また、響く周波数が他のホールに比べ低い帯域となっているようで、原音(生音)は豊かに響くが、高音(倍音)の「抜けの良さ」があまり感じられませんでした。オーケストラにとっては良い響きなのでしょうが、合唱、とりわけ倍音を聴かせどころにしている男声合唱にはあまり向いていないのかもしれません。……と書きながら、第36回東西四大学合唱演奏会(1987年)で、倍音がウリの関西学院グリークラブが「アイヌのウポポ」の空前の名演奏をしているので、「当時の慶應ワグネルには向いていなかった」と但し書きをつけるべきなのかもしれません。
もっとも、上記は開館当初の頃の話ですし、以後、オーケストラは聴いても、純粋な合唱だけの演奏会を聴いたことがないので、エージングを経て音は変わってきていることでしょう。