モーツァルトとマーラーと『ヴェニスに死す(ベニスに死す)』(Echotamaのブログ)

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本日、無事に義母の葬儀が済みました。「葬儀」といっても、時節柄、身内だけのこじんまりしたことしかできませんでしたが。

昨日はお世話になった介護施設のスタッフの方が7~8名ほど挨拶にみえてくださいました。「Nさんはクラシックがお好きで、いつも聴いていらっしゃいましたね」その通りなのです。CDコンポの調子が悪いと、すぐ電話がかかってきて、やれ修理だの買替だのすごい騒ぎ。約10年間の入所中、今のコンポが4台目。よほどハードな使い方をしていたのでしょうね。

そこでハッと気づきました。義母が最後に聴いた曲はなんだったのだろう?遺品のCDコンポを開けてみました。中からは、内田光子さんのモーツァルトピアノソナタ全集が出てきました。「モーツァルト!」

もしかしたらトマス・マン作、ルキノ・ヴィスコンティ監督の「ヴェニスに死す(ベニスに死す)」を思い浮かべた方もいるのではないでしょうか。「ヴェニスに死す」では、ヴェネツィア(ヴェニス)でコレラがパンデミックを起こしていて、現代のコロナとイメージがダブります。そこで、美少年に心を奪われた老作曲家アッシェンバッハ(マーラーが投影されている)はヴェネツィアを離れることができず斃れていきます。

バックに流れるのはマーラー交響曲5番第4楽章アダージェット。色濃い死の影と官能的な美しさを備えた最高の文学、最高の映画、最高の映画音楽、最高のクラシック音楽の一つだと思うのです。

実際にマーラーが亡くなるときに「モーツァルト!」と叫んでいるのは有名な話です。コロナのパンデミックに囲まれた義母は、今際の際にはもはや言葉を叫ぶだけの力を持ち合わせてはいませんでした。しかし、もし叫べたとしたら、内田光子さんとダーク・ボガードを混合(混濁の中かもしれませんが)しつつ、やはり「モーツァルト!」と叫んだような気がしてならないのです。



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