立憲民主党をはじめとする野党4党が武田良太総務大臣に対する不信任決議案を提出しました。本件に関しては私の勤務先グループのトップが渦中の人物であるため、私の立場としてコメントはするべきではないと思っていたのですが、不信任決議案の提出に際して辻元清美議員が「総務省は接待パラダイス」と仰ったとか。ちょっと、ちょっと待ってくださいよ。
確かに総務省の接待について不適切な面があったのは事実で、問題を深く受け止めなければいけないと思っています。しかしながら、「国家公務員倫理規程に基づく届出が、総務省は3件と桁違いに少ない。しかも谷脇元審議官は届出もなかった」ということについて、総務省に問題があることは認めるにしても、他省庁は接待があって良いということなんですか?「接待パラダイス」は総務省だけの問題なんですか?
ネットで探してたどり着いたのは内閣官房が国会に報告した平成30年度の「国家公務員の倫理の保持に関する状況及び倫理の保持に関して講じた施策に関する報告」。「飲食の提供」に限っても、多い方から、国土交通省6,213件、国税庁4,171件、経済産業省2,047件…たった1年間にですよ。ノーパンしゃぶしゃぶであれだけ叩かれた金融庁も250件もあります。しかも本省課長補佐級以上に限った数字です。地方事務所まで入れたら一体どうなるんですか。あとはもう書くのが嫌なので、見たい方は見てください。ちゃんと国会に報告されているんです。
https://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/jinjikyoku/files/h30rinri_houkoku.pdf
これが全て「接待パラダイス」ではないなら何なのですか。
それだけの便宜を図らないと、我が国の各省庁は動かないようにできているのです。いや、公表されているだけでもこれだけだと言ってもよいかもしれません。私のXXは、時代の違いこそあれ、某省の高級官僚でしたが、もっとスマートに、エゲツなく、いろいろやっていました。おそらく総務省(特に旧郵政省)が下手なだけなのです。
だから総務省問題の罪が軽いという気は毛頭ないですが、総務省だけでなく、今の行政の仕組み自体が全部おかしいのです。それをチェックしてなんとかしようとするのが野党の役目なのではないのですか?辻元議員。
先日の日経新聞で片山善博早稲田大学教授(元総務大臣・鳥取県知事)が「官僚の裁量を少なくし透明化を。そうすれば接待は減る」と言っていて、やっと正鵠を射た言葉に出会えたと思いました。でも自治官僚出身の方だから言えたのだろうなあ。官官接待はあっても許認可権は少ないから。※後日付記:片山氏は国土庁出向時も接待を拒否していたそうです。それならば発言に一貫性がありますし、発言できる立場だと思います。
まだ足りないところがあります。私も認可申請に長く携わりましたが、世の中が複雑化しているので、1,2年ずつで転勤してゼネラリストを育てるという古来からの官庁の人事・育成方法では、制度疲労を起こしていて、どんなに頭が良くてもついていけないのです。許認可の決裁を省内で回していただくにあたっては、特にIT関係では担当者にレクチャーしてようやく知識がついてきたと思ったら、すぐ転勤で、またゼロから質問メール攻めに遭わなければなりません。そうしないと上司の課長補佐や課長、局長に説明できないのです。まして将来を見越した立案など絶対に無理です。キャリア官僚のほとんどは5教科7科目を総花的にこなす能力はあっても、専門性や突き抜けるクリエイティビティーなどはまったく想像すらできないでしょう。スペシャリストが必要ですが、スペシャリストが偉くなる仕組みは今の官僚社会にありません。そうなれば課長、局長にあらかじめ予習をしておいてもらわないとスムーズに事が運ばないのです。
そこで、中曽根行革に始まり、中央省庁再編の頃から、(官僚が世の中の高度化・複雑化に追いつけなくなってしまったため)専門家の助けを借りる審議会方式が大幅に取り入れられ、今は数えきれないほどの審議会があります。専門家の意見を聞き、その答申案に対する世の中の考え(パブリックコメント=パブコメ)を集め、最終的に大臣への答申をするという仕組みで、一見まともそうですが、これがクセ者なのです。「専門家」にもいろいろな人がいます。人選をするのは大臣や幹部の官僚で、ムラ社会の仲良しから選ばれます。国民が選ぶわけではありませんし、罷免権もありません。メンバーが固まった時点で審議会の答えは見えたも同然です。人選の中でいかにして味方を増やすか、水面下でのパワーゲームが当たり前に繰り広げられているのです。これが実態なのです。総務省だけの問題に矮小化してはいけないのです。
まだ書き足りないのですが、この辺にしておきます。問題発言ご容赦を。