場外整理とは
場外整理・場内整理は、きちんと運営されているかどうかが一目で判る重要な部署です。
まずは場外整理から。特に年配者のご来場が多い演奏会の場合は、かなり早い時間からご来場されるお客様がいらっしゃいます。その方々が気持ちよくお過ごしいただくことが最重要です。
基本的には、開場1時間前から最低5人準備します。もちろん、もっと早くからお客様が並び始めたら即行動開始です。
1人は当日売りの列を一列にまとめます。列ができたら、後から来るお客様のために列の最後尾に立ち「当日売りはこちらです」と手を上げて誘導を行います。
また、一人は、すでにチケットをお持ちの入場者を、入場口を先頭に、もぎりと同じ列数で整列を行います。もぎりが3列であれば、当然ながら3列で整列していただくことになります。当日売りと同様に列が少なければ、1人でも可能かもしれませんが、列の最後尾で案内する人と、列をきれいに並ばせる人は、別々(つまり2人組み)にしておいた方が良いと思います。
2022年付記:お客様に並んでいただく際、ソーシャルディスタンスを保って、前後の余裕をもって並んでいただくことが必要になりました。お客様の総数がキャパシティの半分程度に抑えられているので大きな問題は起こらないと思いますが、ご注意ください。
あともう一人は、列に並んだお客様に「チケットは既にお持ちですか」と声をかけ、まだ持っていない場合は必要に応じて招待者受付、当日売り、当日預かりにご案内してください。チケットをまだ持っていないのに、列を見て、勢いで(?)並んでしまっているお客様が必ずいます。
ところで、最後尾の方が、「ここが最後尾」というプラカード(別名『トンボ』)を持っている姿を時折見かけますが、スーパーの特売みたいであまり品がないように思えて、私は好きではありません。あくまで落ち着いた声で、にっこりと「こちらです」と案内する方が美しいと思います。
また、場外整理・場内整理の担当者は、お客様からの質問を受ける可能性が最も高いので、自分の担当する扉の周囲を下見しておき、最低限のFAQはあらかじめ覚えておきましょう。フロントチーフの欄にも記載しましたが、再度以下に例を示します。
・トイレの場所
・飲み物(バーカウンター、自販機等)の場所
・インターミッションや終演の予定時刻
・レセプション会場の場所
・レセプションチケットの販売場所
・レセプションの入場料
・楽屋への出入り→原則禁止。フロントチーフに相談
・喫煙所の場所
開場前確認が重要
場外整理が始まり、開場を間近に控えた時間になったら、場内整理のメンバーは「開場前確認」を行います。開場前のステージリハーサル(ステリハ)時に、椅子に楽譜、メガネ、上着等を置きっぱなしにしてしまう出演者が時々いるのです。また、ロビーで弁当を食べた後、周りを汚していたり、会場のゴミ箱にゴミを突っ込んでいたりする恥ずかしい団員がいることもあります。
蛇足ながら、客席での飲食はどのホールでも禁止です。ロビーもホールによっては禁止対象になっている所があります。
ちなみに慶應ワグネルでは、弁当はできる限り楽屋で食べること、食べたあとの弁当ガラは元のダンボール箱にきれいに戻して、業者に回収していただくことを徹底しています(もちろん回収作業も含め弁当業者と契約しています)。もしもお客様ロビー側のゴミ箱に弁当ガラが入っているような事態があれば、すぐ回収して楽屋側のダンボールに持っていきます。(詳細は「(9) 弁当(Echotamaのブログ)」をご覧ください)
その他の忘れ物ですが、開場前確認で見つかるものはたいてい団員・関係者の所有物ですから、この時点できちんと確認しておけば、紛失の危険性は少なくなりますし、終演後確認で見つかった客席の忘れ物はお客様のものだと明確に判別できます。ホールで預かっていただくようホールの担当者に納得していただくことができますので、後から問い合わせてきたお客様の忘れ物について的確に対応できることになります。
さて、問題がなければロビー内の扉全開(内扉・外扉とも)にして、開場の合図を聞きます。
開場の判断
開場を誰が判断するかは、団体によって千差万別かと思いますが、練習責任者とステージマネージャー(ステマネ)が指導者(先生等)に確認(「もう開場時間が迫っておりますので、ステージリハーサルは終わりでよろしいですか?」と丁寧に伺いましょう)し、それをフロントマネージャーに伝えるという手順が一般的かと思います。開場時間はあらかじめ余裕をもって、前倒しにするのが望ましいです。(理由について詳細は「(7) タイムスケジュール作成(Echotamaのブログ)」をご覧ください)
時に、真冬や真夏のコンサートで、お客様を極寒/極暑からお守りするために「ロビー開場」のみ行うことがあります。私は一度だけやってみたことがありますが、自由席だったので、一度ロビーに入ったお客様の一部は良い席を取りたいがために「客席にはまだ入らないでください」と止めても客席まで入っていってしまい、素直に入らないでいる方が損をするような混乱状態になってしまったので、私は二度とやらないつもりでいます。開場するのであれば客席まで入れる状態とします。
場内整理とは
開場後、場外整理の列をスムーズに流れるようになったら、フロントの招待者受付のところにスタンバイし、VIPや車椅子のお客様のご案内を行います。事前に招待者席と車椅子席の位置を覚えておく事は言うまでもありません。
開場すると、自由席の場合、不思議なことにお客様は列を成して同じ扉に向かっていく傾向があります。下見のときに客席の構造を良く調べておき、「こちらの階段からも良い席がございます」等、入り口のところから精力的にお客様を誘導して分散を図ってください。
また、チーフまたはチーフ代理は、客席の埋まり方の偏りを見つつ、できるかぎり均等にお客様が入るように、お客様を誘導する方向を指示してください。特に2階席以上にはなかなかお客様が上がってくれないので、可能な限り上に案内してください。
この事前誘導がスマートに進まないと、お客様が集中してしまった箇所では荷物をずらしていただいたり、一方では空き席が目立ったり等、開演直前になっても座席が固まらないことになり、お客様が落ち着かず、ざわついたコンサートになってしまうおそれがあります。
万一の場合のお客様誘導
開場後は、場外整理・場内整理のメンバー全てが会場内に入ることになり、予ベルの際にはあらかじめ割り振っておいた持ち場の扉の近くでスタンバイします。場内整理・場外整理の皆さんは万が一の災害時の誘導員の役割も担っています。ホールによっては、全扉分の避難誘導担当者の実名を事前提出させられることもあります。非常口と避難経路は必ず確認しておき、万一の際の行動を確認しておかなければなりません。
ドアコントロール
まず予ベル(原則開演5分前)の段階で、扉を半開(内扉のみを閉める)にします。この段階でまだロビーで話し込んでいるお客様には「まもまく開演ですのでお席におつきください」等、一声かけるのが望ましいでしょう。そして本ベルが鳴ったら外扉も閉めます。
基本的にお客様の入退場は、お客様が拍手している間と、ステージの間以外は、他のお客様のご迷惑になるので「原則」禁止です。しかし、この「原則」の運用が難しいところですので、強い要望を受けたりしてトラブルになりそうな場合は、チーフやチーフ代理に必ず相談して進めてください。
ちなみに、最近のグレードの高いホールは、場外整理・場内整理は座付きの方がいるケースが多くなってきました。ただ、その場合でも、トラブルはホール側から主催者側に判断を訊いてきますので安心はできません。
車椅子のお客様への対応
車椅子のお客様の誘導については、できる限り団内でご来場の有無を事前に確認しておきます。現在は主要なホールには必ず車椅子席用の場所がありますので、そこにあらかじめ介助用椅子(パイプ椅子等)と車椅子が入れるだけのスペースを用意し、座席券を準備しておきます(ホールによっては、車椅子席用の座席券の準備しておくようにあらかじめ指示される場合もあります。指示の有無にかかわらず、準備しておくのが良いでしょう)。事前情報なしでご来場いただいた場合は、誘導1名と、スペース確保1名の二人組みで対応するのが良いでしょう。
なお、車椅子のお客様が持参したチケットは、車椅子席の座席券と交換した後には当日売りにまわします。空いていてももったいないですから…。
終演後にしなければならないこと
演奏会終了後は、自分が担当している扉を全開にします。その後、大扉前に集合し「ありがとうございました」を連呼します。ある程度お客様が退場された段階で「終演後チェック」を行います。貼り紙や紙テープはがし、ゴミ等の拾い集め、椅子の戻し(座面上げ)と、忘れ物捜索が主な仕事です。パンフレットに挟んだチラシが床にばら撒かれていたり、傘、メガネ等が多く見つかります。付近の方がまだ退出されていない場合は「このお忘れ物にお心あたりはございませんか」と声をかけてみましょう。
また、ロビーで話し込んでいるお客様には「恐れ入りますが、退出時間が迫っておりますので、お早めにご退出ください」と、優しく一声かけるようにします。
2022年記:終演後にお客様が「密」にならないように、分散退場を義務付けるホールが増えました。客席をいくつかのブロックに分け、順序を決め、順を追ってアナウンスを入れます(例:「1階席AからHのお客様、ご退場ください」など)。また、客席(特に座面と背もたれ)の消毒をホールから要請される場合もあります。ホール側と事前に相談して、指示に従ってください。
未就学児の扱い
未就学児の扱いについて述べます。チラシ印刷の段階で「未就学児のご入場はご遠慮ください」と一文を入れられれば良いのでですが、ウヤムヤのまま本番を迎えることが多いというのが実情です。
また、チラシに書いてあったとしても、未就学児が来てしまった場合には追い返すわけにもいかないので、親子室があるホールはそちらを案内します。また、親子室が無い、または親子室のご利用を承諾していただけない場合は、可能な限り扉の近くに座っていただき、他のお客様からのクレームがあったり、お子さんが騒ぎだした際にはすぐ退場できるようご配慮をお願いすることになります。指定券を持って来られてしまった場合は「扉の近くに……」とお願いすることは困難なので、正直なところ黙認せざるをえません。