東西四大学合唱演奏会(東西四連)は最高峰の舞台でした。音楽的にはもちろんのこと、集客面でも最大級でした。大阪のフェスティバルホールが2700人、東京文化会館が2300人のキャパシティで、2日間ないし昼夜公演。特に大阪は座席券交換方式でびっしりとお客様を入れていましたから、のべ来客数は5000人以上いたはずです。参加する四団体(関学、慶應、同志社、早稲田)のメンバーは皆、最多・最高のお客様に対し、最高の指揮者・指導者のもとで、最高の合唱を聴かせるのだ、という確信に満ちてステージに臨んでいました。
最初に四連に臨んだときの緊張感は今でも忘れることはできません。他の団体に負けたくないという気持ちはもちろんあって、その点はコンクールと通じるものがありますが、コンクールは「失敗したくない」という減点法的なイメージから来る緊張感があるのに対して、東西四連では「今年はどれだけ高い次元の演奏に達することができるだろうか」というプラス面での高揚感から来る緊張感が大いにあったように思います。
今も大学合唱団では、コンクールよりも他校とのジョイントコンサートや単独コンサートを軸として活動する団体が多く、中高との違いが際立っています。その背景に東西四連のように「コンクールを卒業した方が一段上に見られる」という現象の影響があったのは間違いないだろうと思います。(最近は関学が再びコンクールに出場するようになっていますが)
また、東西四連は聴きに来られるお客様のレベルも非常に高く、その点も緊張する理由の一つでした。特に大阪は、満席のお客様の耳が肥えていて、反応がステージ上にビリビリと伝わってきました。良い演奏のときは、まるでステージと客席が一緒に呼吸しているかのようで、客席から咳払い一つ聞こえてきません。お客様の視線が真直ぐ私達に向けられ「もっと素晴らしい歌を聴かせてくれ」と訴えてくるのです。そして終演後の拍手の量は明らかに演奏の質と比例していました。東西四連には、優れたお客様と演奏家がお互いを高め合っていく幸せな関係があったのです。