【2月25日 相模女子大学グリーンホール】昨日はいくつかコンサートがあって迷った日だ。結局一番これまで縁が無かったところを聴きに行くことにした。聞いたことの無い合唱団が初めてのホールで演奏会を行う、こういう演奏会を聴きに行くのは少し勇気がいるが他にはないわくわく感は何とも言えない。
その演奏会は東京農業大学農友会混声合唱部Hallen Chorの第50回記念定期演奏会。会場の相模女子大学グリーンホール大ホールは相模大野駅から徒歩約8分の所にある。女子大の中なのかと思ったらそうではなく相模原市文化会館のネーミングライツによる名称らしい。最大収容1790人の大ホールだが2階席は閉鎖していたので今回は1階客席のみ1036、その7割ほどの入りだったと思う。東京農大は世田谷区にあるが果たして地の利からいってどうなのだろうと思っていたが、多くのOBOGが聴きにきてた。
最初に校歌を歌うのは学生の定番だが聴くのは初めて。なんと山田耕筰の作曲だという。失礼ながらこれは知らなかった。ユニゾンがよく揃っていてハモりも充実していて本編の演奏に期待が高まる。
1ステは松下耕さんの「南海にて」。常任指揮者の吉田宏さんはVOCE ARMONICAで見て以来だが、自ら育てた合唱団を聴くのは初めてのこと。平成29年からの常任というから今のメンバーは全員吉田さんの指揮で育ったことになり、そろそろ自分の色が出せる状態になったところだろう。この曲は耕友会の演奏でなじみ深いが、リズムの乗りが今一つの気がした。楽譜通りに歌われてはいてよくハモってもいるのだが、この曲のもつ溌溂としたところはもっと自由に歌いこなしてこそ生きてくると思う。なかなか難しいことだが。最初のステージで緊張があったのかもしれない。
次いで学生指揮者により信長貴富さんの「かなしみはあたらしい」。この前半の2ステージは学生のみで19名での演奏。少人数だがしっかりしたハーモニーは、やはり最近の若者の音感の良さの表れだろう。美しい和音が心地よかった。
後半はブラームスのドイツ・レクイエム。OB・OG合同ステージとしてあり、出演者一覧によればOBOGが現役より多い28名、さらに粋声の28名が加わって総勢約70名の合唱。粋声は吉田宏さんが主宰する一般の混声合唱団。20名に満たない学生の合唱団がこのような大曲に取り組めるというのは貴重な経験だし、賛助団体を加えるのは50回記念ということであらゆる手立てで成功させようとした結果なのだろうとは思うが、自分たちの演奏会のはずが現役の学生はそれで満足だったのかと少し疑問に思った。しかし演奏は努力した甲斐のある見事なものだった。言葉がよく立っていて管弦楽にも負けずによく聞こえていたのが印象的だった。ソリストの2人は初めて聴いたが、ソプラノの最高音が声楽的な声から外れたのは事故だったのだろう。バリトンは柔らかな美声で美しかった。群馬大学出身という異色だがなんと師匠は新見準平さんらしい。ドイツレクイエムは何度も聴いているが歯切れのよい構成で指揮者のやりたいことがよく伝わり、力量が現れていた。
出演は、指揮 吉田宏、S 渡辺智美、B 清水健太郎、1,2ステのピアノは岩本果子、管弦楽はCollegium XIXの皆さん。
いきっつぁんのプロフィール:早稲田大学卒業。在学中混声合唱団に所属。現在はレクイエム・プロジェクト東京いのりのとき合唱団、日本ラトビア音楽協会合唱団ガイスマに所属。