Chorus ST第14回演奏会(いきっつぁんの演奏会探訪)

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【2023年2月12日渋谷区総合文化センター大和田さくらホール】Chorus STの第14回演奏会を聴いた。この合唱団もご多分に漏れずコロナ禍で前回演奏会は振り回され、一度延期された演奏会も直前の感染拡大で無観客開催を余儀なくされたという。前回は2021年5月1日の開催だった。私の所属するレクイエム・プロジェクトでも5月4日の演奏会が無観客開催を要請されたために延期して同月23日の開催となったその頃の事だ。今回の演奏会はしたがって2018年以来3年ぶりの有観客で満を持しての開催というわけ。

この合唱団を聴くのは初めてだったし清水雅彦さんの指揮を見るのも初めてで楽しみにしていた。メンバーはコロナ禍でもむしろ多少増加したそうで女声13名男声8名の21名。さらに今回はハンドベルアンサンブルとの共演ということで華やかな演奏会になった。

1ステはイーヴォ・アントニーニの作品集として3曲。アントニーニは1963年生まれのスイス人でこのところあちこちの合唱団がレパートリーに加えている。しかしまとめて聴く機会はなかなか珍しい。現代曲の難解さはなく親しみやすい美しい旋律と和声を用いる人だ。しかしジャズを勉強していたことが反映されてリズムに特色が現れている。宗教曲が多いが割に取り組みやすい作品が多いと思う。今回も美しい和音が響き、うっとりと聴いている間に終わってしまった。

2ステは「越境するアンセム-日本語に着替えた欧州唱歌-」として東混のアンセム・プロジェクトで取り上げられた信長貴富さんによるアンセムメドレーの一部。外国曲を取り入れた明治の文部省唱歌をメドレーに編曲したものだがなかなか難しいアレンジで聴きごたえがあった。特に合唱が歌う一方でピアノは伴奏というよりも別の世界を重ねていく感じ。基調には「むすんでひらいて」があるのだがその歌詞は唱歌の「見わたせば」の歌詞で「見わたせば あおやなぎ……」と繰り返される。かなり練習を積んだと見えて好演だったが、男声のパートソロがピアノにかき消されて弱かったのが残念。ピアノと合唱のバランスにもう一工夫あればなおよかっただろう。照明を曲ごとに工夫していたが過剰な演出のような気がした。それがよいという人もいるとは思うが。客席側のライトを使わなかったのは正解で、ここのライトは消したときにぱちぱち音がするのでどうするかと気になっていた。

3ステはハンドベルとの競演で、最初にハンドベルについての解説トークがあったのが良かった。低音部のベルは4キロもあるそうで残響がよく残り、まるでオルガンが鳴り響いているかのようだった。最初は合唱とハンドベルのために書かれた「Let Your Light Shine!」。ハンドベルと合唱が重なりきらびやかな印象だった。次いで合唱のみで「寂庵の祈り」「そのひとがうたうとき」。2曲ともよく知られた人気曲だ。ステージ上が入れ替わって今度はハンドベルの演奏で「Blessed Assurance」。バッハを引用する面白い作品。続いて「夜空ノムコウ」で、ハンドベルの面白さがよく見えた。演奏する方は大変だったかもしれない。

再び入れ替えがあって合唱で竹内まりやの「いのちの歌」。更にハンドベルが加わって最終曲「春の情景 日本の春の歌」。様々な春の歌をメドレーで編曲構成したものでユニークな演奏だった。

これまであまり聴く機会が無い合唱団だったが、年譜を見たら2010年の第11回演奏会から2018年の第12回演奏会まで独自の演奏会は間が空いていた。道理で聴く機会が無かったわけだ。これからは毎年開催するような流れだから次の機会が楽しみになってきた。

指揮は清水雅彦さん、ピアノは青木瞭弥さん。ハンドベルはHandbell Ensemble YDの皆さん。

いきっつぁんのプロフィール:早稲田大学卒業。在学中混声合唱団に所属。現在はレクイエム・プロジェクト東京いのりのとき合唱団、日本ラトビア音楽協会合唱団ガイスマに所属。