「貧乏人は麦を食え」は正しい! ~令和の米騒動に思う~(Echotamaのブログ)

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昨今、コメの話題には事欠きません。暴論かもしれませんが、一応経済学を学んだ者としてハッキリ申し上げます。もう75年前になりますが、池田勇人大蔵大臣(当時、後の総理)が国会でコメの配給制度をやめて市場メカニズムに委ねるべきだとした発言が「貧乏人は麦を食え」と新聞の見出しに切り取られて池田大臣の辞任に至ったのですが、池田大臣の発言は正しかったと思います。コメは主食として価格弾力性が低い(価格が上がっても需要が大きく減らない)財ではありますが、資本主義経済の市場に出る限りは「神の見えざる手」によって市場メカニズムが働くことには変わりありません。つまり、コメが高いのであればいずれ需要は減ります。代替食としての麦があるからです。

少々話がずれますが、私は学生時代ものすごく貧乏でした。なぜかというと、趣味、すなわち慶應ワグネルに関する出費はアルバイトで賄うことにしていたのですが、これが大変だったのです。合宿代、チケット代、週4回の練習会場までの交通費などそれなりの金額になります。しかも一番負担だったのは飲み代です。仲間たちで飲む分は節約しても、女子大との合コンでは渉外マネージャーに「必修です」と圧力をかけられます。しかも当時、早稲田なら割り勘が許されるのに、慶應は全て奢らなくてはなりませんでした。二次会も含めハイC(ハイツェー:音楽界用語で1万円)以上が必要です。そのためか早稲田の定期演奏会は2000人規模の会場で1公演、慶應は2公演だったので、結果的に奢った費用とチケット代の等価交換が生じていたのかもしれません。

とにかくお金がないので削れるのは食費しかないと、真面目に節約方法を考えました。結論は、コメをやめて麦、中でもスパゲッティが最も安価で腹が満たせるということでした。当時コメは5kgで1,500円ぐらいだったと記憶しています。パンは煮炊きするわけにいかないのでカロリーで比較すると、5kgのコメは6,500kcal、パン1斤で843kcalだそうなので1斤100円とすると15斤で12,645kcal、スパゲッティは100gで347kcalだそうなので1kg200円とすると5kgで17,350kcalとなります。そこで私はコメを買うのをやめて、自炊はもっぱらスパゲッティになりました。40年たった現在でも、業務スーパーとかの安売り店でスパゲッティは1kg200円で買えるので、5kg買っても1,000円です。安くてカロリーは倍以上。今、我が家でもコメを買い控え、スパゲッティを買いだめして多く食しています。

値上がりした現在の銘柄米の値段でも安い、もともとコメの値段は安すぎた、零細の農家の苦労を考慮すべきだ、耕作放棄地が増える問題はどうする、食料安全保障の観点から米作は守るべきだ、等々、数々の批判は予想できます。しかしそのために、実質的な減反の補助金(減反政策は終わったと安倍政権時に言われましたが、補助金が残っているので実質的な減反政策は終わっていません)で税金を使い、供給を制限して米価を維持することで農家の収入を支えることは限界になっていることを、今回の「令和の米騒動」は示していると思うのです。

JAの組合員は1千万人、国民の1割近くに及び、JAの政治団体である農政連は自民党に献金する有力団体として政治力を持っていますが、残りの9割は消費者なのです。9割の消費者の税金が1割の生産者に渡され、消費者が税を負担し高いコメを買わされることで可処分所得が減っているということを強く認識すべきです。しかも兼業農家の父ちゃんはサラリーマンとして定職についていることが多いので、農業は副業であって、本当に生活に困っている兼業農家はわずかです。そして、米が5kg1,000円以上する限りはコメの需要は減る、すなわちコメ離れは進んでいくのです。

備蓄米の放出は一時しのぎに過ぎません。今年度の収穫以降はどうなるでしょう。生産量が少ない限り高価格が続くことは「神の見えざる手」による市場メカニズムにおいて自明の理です。

食料安全保障のことがよく言われますが、2022年の農水省の調査では、食事回数の割合において、既に米食は41%、パン18%、麺類が14%だそうです。米食が半分を切っているのです。確かに重要な食料であることは事実としても、コメのみ自給率を保つことにどういう意味があるのでしょうか。パンと麺類を合わせれば約3割強にあたる小麦の自給率が15%しかないことの方がよほど問題ではないでしょうか。コメだけまるで社会主義のように特別扱いなのは、JAの組合員の7割が兼業農家で、主に米作に依存しているのが恐らく理由なのでしょう。

また、多くの兼業農家は三ちゃん(じいちゃん、ばあちゃん、かあちゃん)農業です。特に問題なのはかあちゃん、すなわち農家に嫁に来た女性です。夫の両親との同居と慣れない副業の農業に従事しなければなりません。ただでさえ農家の長男が跡継ぎになるとは限りませんし、跡継ぎになろうとしてもお嫁さんのなり手を見つけるのは困難です。また都会で結婚した後にお嫁さんが田舎について来られなかったり、ついて来ても田舎の超伝導で噂が広がりプライバシーを保てない習慣に耐えられなくなり、離婚して都会で独居または一人親世帯として子供と暮らすケースが多く生じて問題になっています。田舎では高齢化と少子化によって人口減少がますます進み、人手不足が生じています。また都会でも一人親世帯の貧困と非正規労働の増加の一因になっています。これは極めて深刻な女性労働の問題だと思います。

解決法は、まず米を増産して価格を下げることと、それに耐えられるだけ生産コストを下げることでしょう。そのためには小規模な三ちゃん農業は非効率で、法人化と大規模化を進めることです。そうして田舎に雇用を創出し、都会から田舎への人口移動ができれば、働き盛りの世代が田舎に移動して人口が増えます。じいちゃん、ばあちゃんは地代を得るとともに農業法人の労働者として可能な範囲で働いてもらえば良いし、かあちゃんは田舎独特の狭いコミュニティに慣れれば農業だけではない職業選択の自由を得ることができますし、田舎の一般企業の人手不足の助けにもなるでしょう。

各地の農業委員会(農地の用途変更や売買を審査する機関)や農地バンク(耕作放棄地や休耕田について貸し手と借主のマッチングを行う機関)という仕組みがありますが、いずれもJAの天下り先になっており、取引のインセンティブが不足しているので、審査を積極的にしていく意思を持ちにくかったり、売買や賃貸の価格が市場価格より安かったり、買う側・借りる側が現れるだけの待ちの姿勢だったりして、大規模の土地を確保することがなかなか難しい現実があるようです。離農はJAの会員数減少と、預金や農機賃貸料の減少をもたらすからです。

小泉進次郎農林水産大臣は、備蓄米の放出と安値の価格統制を始めました。父親の郵政民営化と同じく、利害関係者である族議員と関連政治団体を抵抗勢力として、大多数である国民を味方にするポピュリズムを武器にしています。JAを郵政と同じように民営化を図るかもしれません。安価に備蓄米を放出した成果は認めますが、所詮は一時しのぎです。今後の25年度米の動向とJAとの関係性を注視していきたいと思っています。そして私はこれからも当面は5kg1,000円のスパゲッティを積極的に食べていきたいと思うのです。

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