4月3日はロマン派の巨匠ヨハネス・ブラームスの命日 ~「ドイツ・レクイエム」と「4つの厳粛な歌」~(Echotamaのブログ)

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亡くなった方の話題ばかりで恐縮ですが……本日4月3日はロマン派の巨匠ヨハネス・ブラームスの命日です。ブラームスは12曲の合唱曲と約300曲もの歌曲を残しており、ロマン派の声楽作曲家として、シューベルトに次ぐ存在と言っておそらく異論はないでしょう。中でも「ドイツ・レクイエム」の人気は高く、混声合唱団は「ドイツ・レクイエム」をプログラムに組むとお客様が増加すると聞いたことがあります。

私も機会があればぜひ「ドイツ・レクイエム」を歌いたいと思っているのですが、果たせないままでいます。実はまだ独身の頃、ある一般合唱団に参加した際、ブラームスの「ネーニエ(哀悼歌 Nänie)」を取り上げていたのですが、練習の最初にドイツ語にカタカナを書き込むし、長母音と短母音の区別はつけないし、語尾の“e”は飛び出るし……。特に語尾は、Schöne(美)という肝心な言葉が頻繁に出てくるので台無しでした。しかも、指揮者の先生がいちいち「そこもデクレッシェンド」などと言うものですから、練習後の飲み会の席で、思い切って先生に「ブラームスはドイツ語のイントネーションに忠実に作曲しているのですから、デクレッシェンドではなくて、『語尾の“e”はエではなく曖昧母音で飛び出さない』という法則一つを知れば全て解決します。まずドイツ語の勉強に少し時間をかけた方が早道ではないでしょうか」と申し上げました。すると「私はこれでメシを食っているのだから、それだけのものがあると思ってもらわないと困る」と言われて、ケンカになってしまいました。私はもうブラームスを歌う気が失せてしまい、その合唱団を辞めました。このときのことが思い出されてしまい、「ドイツ・レクイエム」を歌うチャンスがあっても、慶應ワグネルのような舞台ドイツ語とはいかなくとも、カタカナ読みだったら耐えられないと思い、二の足を踏んだままとなっているのです。

「ドイツ・レクイエム」が歌えなければ、一人で歌うまでです。ブラームスの最晩年にバスとピアノのために作曲された「4つの厳粛な歌」という連作歌曲は、ドイツ・レクイエムと同様にルター版のドイツ語聖書がテキストとなっており、前者がロベルト・シューマンとブラームスの母の死、後者がクララ・シューマンの死を悼むタイミングであることなど、共通点が多くあります。双方とも命日を記念してブラームスに捧げましょう。

混声合唱の皆さんはあまり歌曲とご縁がないかもしれませんが、畑中良輔先生、福永陽一郎先生、北村協一先生などのご尽力のお陰で、慶應ワグネルをはじめとした男声合唱団は、合唱と歌曲は同じ声楽分野としてとても近しく感じているのです。「4つの厳粛な歌」は福永先生の男声合唱編曲版もありますが、低声用の独唱曲は限られてくるので、やはりバス・バリトンの私としては一人で歌いたい。独唱用の原譜は購入してあるので、いつか歌うチャンスがあればと願っております。

独唱を目指さない方、女声の方でも、「ドイツ・レクイエム」がお好きであれば、きっと「4つの厳粛な歌」も気に入ってお聴きいただけると思います。なお、余談ですが「4つの厳粛な歌」の冒頭のメロディが、奥信濃の偉人・中山晋平作曲の童謡「こがね虫」とそっくりなのですが、ブラームスが作曲したのが1896年、中山晋平が1920年代でブラームスが先です。大正時代に中山晋平が「4つの厳粛な歌」を聴いているとは考えにくいので、偶然の一致でしょうが、あまりにも似ているので驚きです。

私の一番のお気に入りは、ハンス・ホッターの歌唱です。1951年ロンドンでのスタジオ録音となっているので、おそらく昔にEMIで発売されたものと思いますが、廃盤になってしまったのでしょう。伴奏はジェラルド・ムーアです。

また、やはりディートリヒ・フィッシャー=ディースカウは外せません。1958年のザルツブルク音楽祭のライブ録音です。この年はブラームスのリーダー・アーベント(歌曲の夕べ)で、これが学生時代に私が自費で買った初めてのCDなのです。現在では単品では販売されておらず、ザルツブルク音楽祭の全集版のみ手に入るようです。こちらの伴奏もジェラルド・ムーアです。ヘビースモーカーだったフィッシャー=ディースカウらしく、手にはタバコが!

新しい録音であればマティアス・ゲルネをお勧めします。エリーザベト・シュヴァルツコップとフィッシャー=ディースカウの教えを受けた、ドイツ歌曲の正統な後継者とみてよいでしょう。伴奏は若き貴公子ダニール・トリフォノフ。これは手に入ります。シューマン「詩人の恋」、ヴォルフ「ミケランジェロの詩による3つの歌曲」も聴けるのでとってもお買い得!


巨匠ブラームスが心血を注いだ300曲の歌曲のなかのたった4曲です。ぜひお聴きになってみてください。