アイヌのウポポ(関西学院グリークラブ第36回東西四大学合唱演奏会)(Echotamaのブログ)

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 この前年に亡くなられた清水脩先生を偲んで、この回の東西四連では、関学グリーと慶應ワグネルは清水作品を取り上げました。関学グリーは、北村協一先生指揮の「アイヌのウポポ」。第1回の世界合唱際に関学グリーが選ばれた際に、アメリカに引っ提げていった、関学の十八番と言ってよい曲です。会場は開館したばかりのサントリーホールでした。

サントリーホール

 満を持して繰り出されたのは、非の打ち所の無い、まさに一糸乱れぬ演奏。しかも重量級の低声部の倍音の上で、高声部がキラキラ輝いている、男声合唱の見本のような発声とバランス。もしも四連がコンクールだったとしたら、この回は関学がぶっちぎりの優勝でしょう。しかも終曲のリムセ(輪舞)に至っては、会場の聴衆までもが踊りの輪に引き込まれていくようで、会場全体が熱狂に包まれました。

 この「アイヌのウポポ」については、東西四連を中心に記された山古堂こと山崎知行氏の素晴らしいサイトhttp://yamakodou.blog54.fc2.com/に、北村先生の興味深い発言が載っています。

 「いや、本当にこれで良いのか、この作品・この演奏は本来のアイヌ文化とは全く異なるから、これがアイヌ文化だと間違って伝えていることにならないのか、と思うと、申し訳ないという思いがあるんだよ」

北村協一先生

 実はこれに類する話を、私もワグネルの先輩であるF森氏から聞いたことがあります。

 ワグネルでは、たとえばドイツ語の曲を歌うとき、ドイツ語の発音、意味、その詩の背景等を調べ上げ、その詩を曲の中でどう表現するかに腐心します。しかし「アイヌのウポポ」では、我々にアイヌ語の素養がないだけではなく、その詩の言葉が純粋なアイヌ語であるかすら不明で、発音や意味をつぶさに調べ上げることは元から不可能です。「アイヌのウポポ」はアイヌの歌にルーツがあるとしても、基本的には和人の歌であり、詩の大半は意味の無い音の羅列なのです。

 しかし、この演奏を聴くと、詩の存在とは全く別に、技術的に感服し、演奏の興奮に心が躍ります。ふだんワグネルは詩と曲を不可分のものとして扱っていますが、詩とは関係なく感動できる「うた」とは一体何なのだろう、と小首を傾げてみたりもするのです。

関西学院大学