【2022年12月1日渋谷区文化総合センター大和田さくらホール】先週はバッハの演奏会が続いた。29日のSalicus Kammerchorに続き、1日にはヴォーカル・コンソート東京による「Concert for Advent 2022」を聴いた。サリクスより人数の多い大編成で、それだけ迫力も違っていた。2014年プロの声楽家により質の高い合唱を目指して設立されたアンサンブルで、初期の事からスケジュールが合うときは欠かさず聴いてきた。回数を重ねるに従って益々美しい合唱が聴けるので楽しみにしていた。今回は「闇の向うから輝く一筋の光」とサブタイトルを付けたJ.S.バッハ作品ばかりの演奏会。合唱にソロあり重唱ありの変化に富んだ演奏会でバッハの世界を堪能させていただいた。
まず冒頭はカンタータ140番。このコラールはあまりにも有名でこれだけを取り出してよく演奏されるが、全曲を通して聴く機会は意外に少ないので興味深かった。続くマニフィカートは荘厳な美しさがあって待降節にふさわしい感動的な盛り上がりがあった。
後半はまず「バッハのクリスマスのコラールと歌曲」としていたがバッハの4曲に田ノ3曲を交えたステージ。なじみ深い旋律でクリスマス気分が高揚する。最後はカンタータ191番「GLORIA IN EXCELSIS DEO」。これはロ短調ミサと同一曲で、冒頭のラテン語以外はドイツ語の歌詞が当てられている。ロ短調は過去の自作からバッハが気に入った旋律を集めてミサの典礼文を当てはめたというが、この曲は初めからそれを当て込んで作曲されたのかもしれないと思った。アンコールにはロ短調の終曲「DONA NOBIS PACEM」が歌われて、ロ短調全曲を聴いたような気分で終わった。最後にこの曲を持ってくるのは欧州で戦争が続いている時節柄万国共通の想いを現している。
会場の渋谷区文化総合センター大和田さくらホールは満席とはいかなかったが最後まで満足の拍手で満たされていた。ただ、このホールでのソリストの声は、前に立っているにもかかわらずまるで遠くから聴こえてくるような感じがする。歌い手の方はどんな感じだったのだろうか。合唱は良く響いてくるのだが、指揮者の近くに立つと反響を味方に出来ない構造になっているようだ。つまり壁際で歌った方が客席にはよく聴こえるということ。いっそのことソロも合唱の席で歌った方がよく響くのではないだろうか。ついでに言うと今回は関係なかったが、スポットライトを使うとライトの熱で回りの金属がパリパリ音を立てる。つけたり消したりするとその音が2階席にいるととても気になる。電球をLEDにすれば幾分ましかもしれないが、根本的には照明設備を取り替えないと治らないかもしれない。合唱ではまず使わないだろうが舞台効果のために照明を使うときは要注意だと思う。
出演は、指揮 四野見和敏、S1 池田真紀、石井実香、大森彩加、寺田悠子、長尾良子、S2 大田茉里、小松奈津子、高山ゆみこ、曽禰愛子、渡辺藍子、A 古賀裕子、佐藤智子、新明裕子、新田壮人、横町あゆみ、渡辺新和、T 久保田敏生、曽部遼平、町村彰、喜多村泰尚、山本和之、B 阿部大輔、落合一成、木谷圭嗣、沼田盛也、目黒知史、和田央、管弦楽 VCTバロック・オーケストラの皆さん。
いきっつぁんのプロフィール:早稲田大学卒業。在学中混声合唱団に所属。現在はレクイエム・プロジェクト東京いのりのとき合唱団、日本ラトビア音楽協会合唱団ガイスマに所属。