政府が6月7日、岸田文雄政権発足後、初めてとなる「骨太の方針」を閣議決定しました。「骨太の方針」とは、今後の経済財政運営の指針となるものですが、従来まで示してきた財政健全化の目標年限に関する記述「2025年度のPB(プライマリーバランス:政策経費を税収でどれだけ賄えているかを示す指標)黒字化」が消えました。
安倍元首相が裏にいるようです。提言案に「連年の財政出動が企業行動を変革できたとは言いがたい」などと盛り込んだらしいので、「アベノミクスの成長戦略を否定するのか」とお怒りになるのはごもっともとは言えます。
ただし、財政健全化というのは、安倍政権時代にも堅持してきた目標です。確かに岸田首相は緊縮財政に舵を切りたかったきらいがありましたが、財政健全化目標そのものを削ってしまい、積極財政派の意見を大幅に盛り込んでしまったのは大きな政策変更です。私が支持してきたアベノミクスの財政出動は、デフレ脱却のために必要なのであって、安定的にマイルドなインフレ(=リフレ)が達成できるようになっても積極財政を続けるなんて言っていませんでした。いまや安倍元首相が主張するアベノミクスは財政出動が大きく変質し、肥大化しているのです。
これは先日「参議院選挙に向けて、各党は経済政策に関する説明責任を果たしていただきたい」で記したMMT(現代貨幣理論)の影響なのは明らかです。どんなに財政出動しても日銀に国債を買わせれば大丈夫なのですか。買わせられるのですか。いま日銀の黒田東彦総裁が批判にさらされていますが、家計がどうのこうのとか揚げ足をとるよりもよほど大切な問題です。財政健全化を先送りしても本当に大丈夫なのか。将来の世代にツケを回すことがないのか。きちんと追及して議論していただいたうえで、その是非を判断していきたい。それが将来に関する私たちの責任だと思います。