参議院選挙に向けて、各党は経済政策に関する説明責任を果たしていただきたい(Echotamaのブログ)

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「政治ネタは読まれない」と思いつつも、大事なことだと思うので、また書いてしまいました。不愉快な思いをさせてしまっている方がいたら申し訳ございません。

まず最初に断わっておきますが、私は支持政党を有していません。なぜなら基本的にはリバタリアンだからです。以前「日本維新の会はリバタリアン党?」という投稿をしたのですが、昨今の日本維新の会の動きをみると、リバタリアンを代表する勢力とすることはとてもできないと思い、支持するのはやめました。また私は「金融緩和の効果を認めた野口悠紀雄氏」でも書いたとおりリフレ派でもあります。リフレ派は財政出動も容認するので、そこはリバタリアンと矛盾しており悩ましいところですが、あくまでもインフレターゲットよりも物価水準が低い場合のみ財政出動するのであって、必要最低限だと思っています。また、新自由主義の考えをそのまま容れるつもりはありません(ややこしくてすみません)し、ムラ社会の保守主義を支持するつもりもありません。

また、日本共産党の支持者に間違われたことがあるのですが、法人税の引き上げとか、最低賃金1500円とか、ちょっと経済を学べば現在はとても無理か矛盾するようなことを「ぶれずにつらぬく」とか仰っているので、お抱えの経済学者さんとかがいるはずなのに、どうしたものかと思っています。そういえば立憲民主党との「政権獲得での協力」は見送られたようですが、共産党側が歩み寄らずに「ぶれずにつらぬく」間は、立憲民主党のマイナス面の方が大きいように思えます。ただし、いずれにせよ今のままでは無党派層の受け皿にはなりえず、立憲民主党の議席は伸び悩むでしょう。負けか大負けかの違いになってしまいそうです。

付記:各党の公約を調べていたら、立憲民主党も「時給1500円を将来的な目標に最低賃金の段階的な引き上げ」と言っていました。これがどういうことを意味してしまうのか、反論を書きたいと思っております。

ただ、自民党の経済政策も疑問だらけです。皆さまは次第に岸田文雄首相の言動が変わってきていることにお気づきでしょうか。いつも「新しい資本主義」で「所得倍増」とは言っていて聞こえがいいですが、範囲と手段がその都度違うのです。

最初は「中間層の拡大にむけ分配機能を強化し所得倍増」と言ったので、高所得者からの再分配を積極的に行ない、新自由主義から大きな政府へと大きく舵を切るのかと思いました。すると次には「子育て・若者世帯に焦点を絞り所得倍増」と言い、子供への給付金や住居費支援のみに範囲と規模が狭まってきており、これではとても「中間層の拡大」「所得倍増」とは言えません。しまいに最近は「NISAなど総動員して所得倍増」ということで、投資を喚起する姿勢となっています。既に高所得者からの抜本的な再分配については「金融所得課税の強化の議論も継続している」という答弁をしていて、霞が関・永田町語では「議論している」というのは「やるとは言っていない」という意味ですから、所得税はおろか金融所得課税すらもう消えたということだとわかります。

あらためて首相に問いたいです。「所得倍増」で「分厚い中間層を作り出す」ためには、就職氷河期のワーキングプアの世代(すなわち「子育て・若者世帯」)はもちろんのこと、中低所得者全体を底上げすることが必要だったのではなかったのですか。NISAや投資ができるのは既に中間層になっている層です。貯蓄に回せるお金がないカツカツの中低所得者層はできません。すなわち、投資ができない層は、すでに「所得倍増」から除外されてしまったということではないですか。もはや「所得倍増」で「分厚い中間層を作り出す」なんて絵空事ではないですか。

結局、岸田首相の政策は「新しい資本主義」ではなく、昨今の自民党や財務省で主流となっている、以前からの新自由主義(日本の場合は積極的に小さな政府を目指しているのではなく、「財源がないからもうお金は出せません」と言っているわけですが)に絡めとられてしまっているように見えます。

一方で、気になっている動きがあります。先日補正予算が可決され、2兆円の物価対策が折り込まれましたが(まあ選挙対策ですね)、財源は全て赤字国債です。コロナで90兆円も国債を発行したので、我々は2兆円でももはや不感症になっていますが、そもそも国債を際限なく発行していいのでしょうか。財務省によると国債の発行残高は2022年度末で1026兆円と見込まれ、さらには地方債も200兆円もあります。

従来の政府・財務省の考え方は「財政均衡主義」で、政策には財源が必要であり、租税と均衡すべきだというものでした。その考え方でいけば、政府が発行した大量の国債も償還時には租税で返済しなければなりません。後々の世代にツケを払わせることにして票を買ったということになります。将来の大増税がありえるのか、説明が必要でしょう。その点を岸田首相は明らかにしていません。

しかし、昨今安倍元首相が自民党の「財政政策検討本部」の名誉会長になっていて「財政再建を棚上げしてでも歳出を増やすべきだ」と発言しています。これはMMT(現代貨幣理論)の研究会です。

MMTについてざっくりご説明します。自国通貨で国債を発行している限り国債の償還も国債で可能であるからはデフォルト(債務不履行)は起こらない。将来の大増税も起こらない。したがってもっと借金(国債を発行)して財政出動をすべきだ。発行した国債は日銀が買い取ってくれれば良い。

現在の日銀はリフレ政策をとっています。デフレ下にあれば通貨供給量を増やしてインフレへ誘導するために国債を購入していたわけですが、「インフレ率が安定的に2%を達成した」と判断したのであれば購入をやめるでしょう。そうでないとリフレ(=マイルドなインフレ)になりません。MMTを採用し「国債を買い続けろ」というのはリフレからの大きな方針転換になります。

先日、安倍元首相が「日銀は政府の子会社」と発言して、日銀の独立性を定めた日銀法に触れるのではないかと物議を醸しましたが、「日銀は政府の子会社」と言うのはMMT論者の常套句ですから、当然日銀を牽制したものでしょう。また、ひいては「財政均衡主義」「財政再建」を堅持している財務省への牽制とも受け取れます。

また、れいわ新選組の山本太郎代表の「消費税0%」の主張にもMMTの影が見て取れます。

私はMMTは信用していません。公共事業には非効率がつきものです。先日投稿した「参議院選挙で文化政策を公約にする政党・候補者はいないのか」の新国立劇場の例などを見ても明らかです。最も効率的な分配は市場によって成されるというフリードリヒ・ハイエクの考えに私は賛同しています。また、財政規律が守られなくなる、すなわち優先順位づけ無く恣意的に公共事業が成されていく可能性を排除できません。そして、本当に国債のデフォルトが起こらないのか、ハイパーインフレが起こらないのか、信用に足る保証がありません。

余談ですが、MMTを唱えている学者の中には、「コロナは存在しない。あったら飲んでもいい」と発言してコロナ陰謀論者の会に参加しつつワクチンを接種していたり、嫌韓論をぶちまける民族差別主義の2ちゃんねらーからなぜか経済学者になっていたりなど多士済々(?)で、経済理論以前に人間としていかがなものかと思える方もいるので、信用ならないなーと思う部分もあります。

したがって、コロナ対策・物価対策・文化政策はありつつ、膨大な政府の借金について「財政再建」は必要なのか不要なのか、将来の大増税はあるのかないのか、中低所得者層の「所得倍増」は本当に可能なのか、きちんと政策を説明していただきたいのです。もちろん野党もです。少子高齢化社会に対応するにあたり、とりわけ「子育て・若者世帯」にとっては、将来への不安、収入の不安、子育ての不安、就労の不安、教育の不安、年金の不安がつきまとい、子育てを躊躇、断念、または一人っ子のみとしてしまうことが起こっており、対応は一刻の猶予もありません。各政党の政策に注目したいと思っています。