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1月26日に法政大学アリオンコールが2022年度を持って休団する、との表明があった。アリオンコールといえば東京六大学合唱連盟(男声六連)の一員で、長い間田中信昭さんを指揮者に前衛的な作品で光彩を放っていた。私の学生時代には定演の4ステージすべてが委嘱作品(再演も含む)という離れ業があって周囲をあっと言わせた。15年ほど前に友人の息子がアリオンで歌っていたがその時の六連オンステメンバーは8人だった。既にそのころから極端な団員減少に見舞われ、その後の六連でも6人とか8人でのステージで痛々しかった。数年前に田中さんが退任し蓮沼喜文さんを招き、女声団員を加えて再起を図ってきたが、コロナ禍による新歓停止などの逆風に耐え切れず、ということらしい。
コロナ禍で2年間何もできなかったところは上級生が卒業して当時の1,2年生だけになっているはず。単純に人数は半減していることになる。ただでさえ10人ほどしかいなかったところは5人になってしまい、今年の卒業生を送り出せば2,3人になる計算だ。これではサークルとしての成立要件(早稲田の場合は早稲田生が5人いることが要件だが法政の場合は不明)を欠き、存続できなくなる。実際アリオンでは今年の卒業生が出てしまうと2年生が2人残るだけとなり存続できなくなって解散を決断したということのようだ。外部には休団としているが実態は解散、ということはこのままでは六連から法政が消えるということになる。
法政大学では2009年に法政大学混声合唱団が解散しており、これで合唱団としてはアカデミー合唱団が唯一の存在になる。アカペラアンサンブルなどの周辺音楽団体はあるものの4万人を超える学生数を誇る総合大学の合唱団が一つしかない、というのはいかがなものだろうか。
過去にも団員数がゼロになったところから復活を遂げた例がある。都立大学エリカ混声合唱団は都立大学が多摩南大沢地区に移転した際に一度消滅したという。ところがこれを残念に思ったOB会が指導者を募集してグリークラブのOBをかつぎ、ゼロから団員募集を始めてひところは60人を上回る合唱団にまで回復させ、新作委嘱など活発な活動をするまでになっていた。最近は40人ほどで活動しているようだ。東京経済大学グリークラブは関谷晋さんの晋友会の有力メンバーだったが、2015年には8人までメンバーが減ってしまい、OB会が演奏会のチラシ挟み込みなど積極的な支援活動に乗り出し団員数が回復したところでコロナ禍に出会ってしまった。今は女子も加えても一桁のメンバーで維持されているらしい。関西学院グリークラブでも一時30人程度まで人数が減ったところでOB会が乗り出し、それぞれの出身高校に行って関学への入学とグリーへの入団を勧誘して回ったという。現役の演奏会にはOBとの合同ステージを組み込み、大人数の男声合唱の魅力を味わせることでつなぎ止めを図った。こうした涙ぐましい努力が実を結び、数年前には大人数の早稲田を上回る陣容で四連の演奏会を迎えていた。
こうした例を見るに、10人を下回る状態はそのままでは回復不能の状態で、そこから回復するには外部の力を借りるしかないということ。OB会がそこで乗り出さなければ休団に至るのも当然の結末かも知れない。アリオンのOB会も金銭的な支援は継続して行ってきたようだが、もっと前から出来ることがあったのではなかろうか、と思うと残念でならない。
法政大学のキャンパスは市谷・多摩・小金井に分断され相互の行き来が難しいようだ。早稲田大学でも早稲田周辺と所沢に分かれているし、慶應は三田・日吉・藤沢に分断されている。現代の大学の宿命かも知れないが、教養課程と専門課程で別れてしまうと上級生と下級生の行き来が無くなり縦の関係が薄れてしまう。こうした分け方は東京大学が駒場と本郷に分かれているのに倣ったのかもしれない。もともと予科としての第一高等学校が駒場にあり戦後教養学部となった。しかし形だけまねても距離を無視すると分断された関係はどんどん希薄になる。早混と関係がある同志社学生混声合唱団もキャンパスが京田辺と今出川に分かれてから人数が激減してしまった。
早稲田の場合は学部ごとに分かれたのが幸いであったと思う。その中での上下関係が維持されるからだ。法政もキャンパスは学部ごとに分かれているというから必ずしもそれが原因でもないらしい。
コロナ禍でも早稲田の学生部はサークルの新歓のために新歓用サイトを立ち上げて新入生向けの情報発信を支援してくれたし、稲門音楽連盟も学生部に対して学生支援を申し入れたりしたが、他大学ではどうだったのだろうか。
とにかくアリオンコールには復活を望む声が多く聞こえている。復活できるかどうかはOB会がどれだけ深く関与して汗をかくことができるかにかかっていると思う。
いきっつぁんのプロフィール：早稲田大学卒業。在学中混声合唱団に所属。現在はレクイエム・プロジェクト東京いのりのとき合唱団、日本ラトビア音楽協会合唱団ガイスマに所属。