【2023年2月11日大森福興教会】大森福興教会でSalve Bandの第2回公演を聴いた。この教会はコロナ禍で演奏会が悉く中止となる直前2019年3月に演奏会を聴いて以来だからほぼ4年ぶりになる。大森駅から急な階段を上って少し歩いたところにあるこの教会は、聖堂だけあって響きの良い空間。客席は100がやっとという小さな会場だが、器楽アンサンブルや個人のリサイタルにはお手ごろだ。Salve BandはVn×2、Va、チェロ、コントラバス各1にチェンバロを加えた小編成のアンサンブル。現代では演奏機会の少ない教会音楽とバッハのチェンバロ協奏曲を演奏することを目的に結成されたグループだという。
私が聴くのは初めてだが、ソプラノの本宮先生が出演されるので聴くことにした。プログラムはテレマン(1681生)と1685年生まれのヘンデル、J.S.バッハ、ドメニコ・スカルラッティの3人の作品で構成。最初はテレマンのシンフォニア・スピリトゥオーゾから。テレマンという作曲家を知ったのは高校の音楽の時間だったと思うが、西洋音楽はバッハヘンデルから始まったと思っていた私は驚いて聞いたことを覚えている。昔の音楽の時間ではバッハ以前の音楽など教えていなかったのだから止むをえまい。弦楽合奏とチェンバロによる宮廷風の音楽はぎすぎすした現代にあって癒しの音楽でもあるだろう。続いてヘンデルのトリオ・ソナタがあり、一般受けしそうなヘンデルの旋律が心地よい。次いでこの日初めての声楽曲、ヘンデルのカンタータ「私の美しい人の」で本宮先生登場。言語はイタリア語で情感たっぷりにレシタティーヴォアリアが交互に歌われ、会場を魅了した。
後半はまずJ.S.バッハのチェンバロ協奏曲第5番。このグループが目的とした作品だからそれなりに力の入った演奏だったが、バッハはもっと面白くできるのでは?と感じた。バッハの器楽曲はヴィンシャーマンの演奏が理想と思っているので、より躍動的な演奏だったならば好印象を残しただろう。
最後はドメニコ・スカルラッティのSalve Regina。再び本宮先生の独唱で美しい旋律が歌われた。作曲家によってさまざまに色合いの変化があるのは当然だが、なじみのない旋律には少し戸惑いもある。
それにしてもほぼ同年代の4人の作品補並べて演奏されてみるとそれぞれの個性の違いがよくわかって興味深かった。
出演は、S 本宮廉子、チェンバロ 榑谷学・津屋式子、Vn 柿沼かおり・小林美央、Va 松浦友哉、チェロ 高藤朋子、Cb. 高藤ゆかの皆さん。
いきっつぁんのプロフィール:早稲田大学卒業。在学中混声合唱団に所属。現在はレクイエム・プロジェクト東京いのりのとき合唱団、日本ラトビア音楽協会合唱団ガイスマに所属。