前にも少し書きましたが、私のライフワークの一つはWikipediaの執筆です。もちろん慶應ワグネル関係の記事を充実させたいという気持ちもあるのですが、Wikipediaは宣伝媒体ではなく百科事典だという位置づけなので、管理人から宣伝と判断されると警告がつき、改善されないと削除されます。また、特筆性を満たしていない(つまりそれほど重要ではない)項目も削除の対象となります。そのためWikipediaの執筆は慶應ワグネル三田会(OB会)副幹事長としての広報活動という立場ではなく、あくまでも私人として取り組んでおります。しかしながら取り組むにあたっては大きな危機感を抱いております。
最近は何かについて調べたいとき、まずGoogleで検索し、その記事がWikipediaにあれば先頭か2番目に表示されます。そしてWikipediaを見て、その情報の量・質によって価値を判断することが多いと思います。私たちが得る情報はGoogleによって支配されていると言っても過言ではないと思います。
それなのに、日本のWikipediaではクラシック音楽の記事が薄いのです。しかも声楽・オペラ関係は目を覆いたくなるほどです(以下敬称略)。木下保、畑中良輔もひどい記事でした。藤原歌劇団、伊藤京子(かつての二期会のプリマドンナ、日本藝術院会員)、東敦子(日本を代表する国際的なソプラノ)も書きかけの記事。中澤桂(木下保と夕鶴の「つう」を組んだ名ソプラノ)、瀬山詠子(紫綬褒章、勲四等宝冠章)、砂原美智子(国際的なソプラノ。紫綬褒章、勲四等宝冠章。藤原義江との不倫でも有名)、長野羊奈子(日本人初のベルリン・ドイツ・オペラ団員。若杉弘の細君)、木村俊光(ライン・ドイツ・オペラの第一バリトン。東洋人としてはじめて終身雇用の権利を得る。日本芸術院賞受賞)、三谷礼二(オペラ演出家)、鈴木敬介(オペラ演出家)などですら記事がない。佐藤正浩、大久保光哉、久邇之宜、前田勝則の記事もなかった。外国人でもエリーザベト・シュヴァルツコップ、ハンス・ホッター、ヴォルフガング・ヴィントガッセン、ビルギット・二ルソン、クリスタ・ルートヴィヒ、ブリギッテ・ファスベンダーすらまともな記事ではない。ライン・ドイツ・オペラ、サンフランシスコ・オペラ、シカゴ・リリック・オペラの記事はない。マルタ・メードル、レオニー・リザネクの記事がなかったのも信じられませんでした。Wikipediaの執筆層は20~30代のいわゆるデジタルネイティヴの世代が多いそうです。これから日本を牽引していくであろう世代に声楽が浸透していないのは空恐ろしさを感じます。
一方で、韓国語のWikipediaではクラシック音楽の記事が充実しているのです。近年ヨーロッパで活躍するアジア人の中で、韓国人の存在はますます大きくなっています。ドイツの歌劇場は韓国人なしでは成り立たないと言われるほどです。韓国は日本の半分の人口です。クラシック音楽に関する「民度」はすでに遥かに韓国に追い抜かれてしまっているのではないでしょうか。東芝や三菱の半導体がサムスンに凌駕されてしまったことが思い起こされます。
日本ではコンサートに足を運んでいただいている方の多くは高齢者です。コロナ禍でコンサートはリモートで中継されることが多くなりましたが、どれだけの高齢者が対応できているでしょうか。そして若い世代は、昔よりも音楽から離れてしまっているのではないでしょうか。私が本社勤務だったとき、初台商店街の居酒屋で飲んでいると、後ろの席で顔も名前もよく存じ上げた方が「日本の文化行政はなっとらん」と怪気炎をあげているのによく出会いましたが、その行政をコントロールするであろう代表者を選挙で選ぶ国民の「民度」が低下しているのではないかと思えてなりません。
Wikipediaの執筆という些細なことではありますが、少しでも「民度」の向上と音楽界への貢献ができたらと考えております。まだ、書こうと思っていて書けていない音楽家がたくさんいます。「ぜひこの人は」という方がいましたら、アドバイスいただければ幸いです。ただ、外国人については、英訳と独訳しかできないので、対応が限られることをご容赦ください。
後日記:伊語も勉強中なので、オーダーがあればお知らせください。頑張ります。