法政大学アリオンコールが活動を停止しました。以下はTwitterの公式ページ上のアナウンスです。
アリオンコールOB・OG会会報によると、今年度卒団予定の4名を残し、3年生3名が就職活動に専念。今年の1年生の新入団員が獲得できなかったため、活動を残された2年生2名で全て行なわなければならず、活動の継続は難しいと判断したとのことです。学校から割り当てられた部室も既に10月末で退去となっており、今年3月で現4年生が卒団した後、現役団員はゼロとなります。公式アナウンスでは「休団」となっていますが、実質的には「消滅」と言わざるを得ないでしょう。
法政大学アリオンコールといえば、戦前からの長い歴史を持ち、戦後は田中信昭先生の下、現代音楽をレパートリーの中心として活躍してきました。現代音楽に対する好悪は別として、「常に最先端の前衛であることを目指し、音楽表現の可能性を広げる」ことについてその姿勢は一貫しており、アリオンコールの果たした役割は非常に大きかったと私は考えています。他の団体には不可能な、強烈な個性ある演奏は比類がありませんでした。アリオンコールを失うことは、日本の音楽界にとって大きな損失と言っても過言ではないと思います。
また、所属した団員の経験・教育の面においても、例えば慶應ワグネル等が諸先生方の下で新たな景色を見させていただいたように、アリオンコールの団員はアリオンコールにしか見えない景色を見ることができていたのだと思います。そうした経験を積んだ団員たちが、社会の中でより豊かな文化を理解し広げているということも忘れてはならない重要な点だと思うのです。
昔と異なり、現在の学生を取り巻く環境は厳しさを増しています。履修基準の厳しさ、就職先企業の要求水準の上昇、資格試験等の普及、就職活動期間の長期化、……挙げればきりがありません。もうかなり前のことになりますが、やはり伝統ある上智大学グリークラブが一旦消滅しています。
そこに現在はコロナ禍が襲い、とりわけ三密を伴う合唱活動を取り巻く環境は厳しさを増しています。大学からは勧誘活動も含めた活動停止の要請、練習会場の確保の困難さ、演奏会場からの開催自粛あるいはステージ出場者・来場者数抑制要請……。一般合唱団に至っては相次ぐ活動自粛、練習参加見合わせ等々……。多くの団体が人数減、活動休止や解散に追い込まれています。アリオンコールもコロナ前から危機に瀕していましたが、コロナでとどめを刺された格好です。アリオンコールは氷山の一角なのです。
文化は人の生き甲斐であり、人の心を豊かにするものです。また、文化は国民の「民度」を向上させるものです。私は合唱をはじめとした文化が衰退に瀕していることに大いに危機感を抱いています。今こそ教育機関、行政、民間、各個人、いずれのレベルにおいても、文化の衰退を食い止めなければならないと切に思います。私にも何かできることがないか。このサイトもその危機感の現れであることは申し上げるまでもありません。
アリオンコールはぜひとも復活していただきたい。そして危機に瀕しているあらゆる合唱団が元の輝きを取り戻し、一層の発展を遂げてほしい。それが人の心を豊かにし、国家を豊かにする、と私は確信しています。