またデリケートな長文で失礼します。今、靖国神社でも、千鳥ヶ淵でも、桜が散っています。
先日ラジオを聴いていたら「ノーベル物理学賞を受賞した赤﨑勇さんが92歳で亡くなりました。赤﨑さんは昭和4年、鹿児島県知覧町、現在の南九州市に生まれ…」えっ?今はもう「知覧」はないの?それにしても「南九州市」とは、ずいぶん大雑把な名前をつけたもんだ。
「知覧」といえば、大日本帝国陸軍特別攻撃隊の飛行場が置かれた「特攻隊の町」ではありませんか。特攻隊が搭乗した戦闘機は多岐にわたりますが、唯一特攻専用のために開発・実戦配備された機体があります。その名前は「桜花」。一人用の操縦席はありますが、もはや飛行機というより、機首に大量の爆薬を入れたロケット弾です。もちろん脱出装置はありません。一度乗ったら生きて帰ることは100%ないのです。自力で浮揚することができないので、一式陸上攻撃機に吊るされて、目標に接近してから発射され、高速のロケット噴射で敵の防空域を突破し、敵艦に体当たりして爆発する想定でした。一機でも命中すれば敵艦を一撃で破壊する威力があり、実戦に投入され戦果もありました(すなわちそれだけの命が失われた)が、重い「桜花」を吊るした一式陸上攻撃機は速度も機動性も劣るため、米軍は桜花発射前の一式陸上攻撃機もろとも撃墜する作戦に徹し、本懐を遂げぬまま散った特攻隊員も多くいたようです。「桜花」は靖国神社に実機が展示されているそうです。
「桜花」は上記のような問題から、投入後も本土決戦にむけ改良・増産中に終戦を迎え、乗り込んだ特攻隊員は多くありませんでしたが、知覧飛行場からは1,036名の特攻隊員が飛び立ち、桜のように散って、二度と帰ってきませんでした。
特攻隊に関しては賛美や非難など様々な意見があることは承知しています。私は、ヘイトスピーチのような人権侵害などの問題がない限り、思想信条の自由や表現の自由は守られるべきだと思っていますので、様々な意見があって良いと思っています。ただ、歴史に学び、忘れないようにすることは少なくとも必要だと思います。知覧町という名前の自治体は消えてしまいましたが、旧日本軍が「桜花」という特攻専用機を開発・実戦配備したこと、「知覧」という場所を忘れることはあってはいけないことだと思っています。
桜花が散るこの季節に、知覧がふるさとの赤﨑勇博士がこの世を去った。そのニュースで知覧という地名が日本中に流れた。なにか因縁めいたものを感じずにはいられません。
娘が「桜が散るのって綺麗だよねー」と言うので「そういうことは軽々と口にしてはいけない場合もあるんだよ。それはね…」と言い始めたら、「また嫌なこと言うー」と嫌われてしまいました。あああ。