ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウを悼む(Echotamaのブログ)

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 畑中良輔先生が亡くなる6日前、5月18日にディートリヒ・フィッシャー=ディースカウが天に召されました。

 畑中先生の絶筆となった追悼文が「音楽の友」誌7月号に掲載されています。タイトルは「フィッシャー=ディースカウに憧れなかった者はいない」。大量の優れた録音、揺るぎの無い解釈、卓越した歌唱のテクニック。何をとっても超一流で、一人の人間にこれほどの仕事ができるのか信じがたいほどです。もはや「憧れ」を通り越して「嫉妬」に近い感情を持たれることもあったのではないでしょうか。とりわけ晩期の録音に関しては、「テクニックが鼻につく」などと言われることもあったように思いますが、それも、フィッシャー=ディースカウがあまりに偉大な存在でテクニックも卓越しているがために、ミソの一つでもつけたくなるような気持ちが芽生えてしまうがゆえではないかと思えるのです。

ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ

 今後、フィッシャー=ディースカウが残してくれた膨大な録音があらためて評価されるとき、おそらくその名声は現在よりも高らかに響くものと思います。

 私事ですが、フィッシャー=ディースカウが亡くなったと聞いてからわずか数日後に畑中先生の訃報を聞いたものですから、頭の中は大混乱でした。フィッシャー=ディースカウは私も大好きな歌手で、おそらく私が所有する声楽のCDのなかで1番枚数が多いと思います。私が初めて買った歌曲のCDもフィッシャー=ディースカウのブラームス歌曲集でした。

ブラームス:歌曲集

  • アーティスト: ブラームス,フィッシャー=ディースカウ(Br),ジェラルド・ムーア(P)
  • 出版社/メーカー: ORFEO
  • メディア: CD

 また、他の歌手の演奏で気に入った曲があると、「これはフィッシャー=ディースカウだったらどう歌うだろう」と思い、ついついフィッシャー=ディースカウのCDも買ってしまうということがよくありました。

 今、私の頭に思い浮かぶのは、ゲーテの詩にヴォルフが曲をつけた「ガニュメート」です。

ヴォルフ:ゲーテの詩による歌曲集 (Wolf, Hugo: Goethe-Lieder)

  • アーティスト: ヴォルフ,フィッシャー=ディースカウ(Br),スヴァトスラフ・リヒテル(P)
  • 出版社/メーカー: ORFEO
  • 発売日: 2000/10/23
  • メディア: CD

 神に愛され、神に抱かれ、遠い天空に向かって遥か彼方へ舞い上がっていく姿が、フィッシャー=ディースカウ自身と畑中良輔先生にダブって、思わず涙が出てきます。