立教メサイア(いきっつぁんの演奏会探訪)

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【2022年12月7日東京芸術劇場コンサートホール】三年ぶりに有観客で開催された立教のメサイア。7日の開催だったが私が聴くのも三年ぶり。会場の東京芸術劇場は満席とはいかずそこそこの入りだったが、久しぶりの生本番に舞台上も客席も高揚していたようだ。

私がこのメサイアを初めて聴いたのは2014年のこと。以来可能な限り聴きに来ていて今回が5回目。初めて聴いた時のトランペットソロが神がかり的な完璧な演奏で、いつもその再現を願っているのだが、今回はどうか、期待に胸が躍った。

コロナ禍を経ての開催で、現役グリークラブの参加者が激減。女声16名に男声が7名しかいない。これでフルメンバーだとすると男声グリーは壊滅状態ではないか。大学合唱団はコロナ禍の間の新歓をどのように行ったかで結果が大きく分かれてしまった。大学の方針にもよるだろうが、工夫してなんとかいろいろな手立てで新入生を勧誘できたところはまだ維持できているが、活動を停止せよと言われて全く何もしなかった(できなかった?)ところは2学年がすっぽりと抜けた状態で今年を迎えているわけだ。合唱団存続の危機に立っているといってよい。そこで今回のメサイアはかなりOBOGの参加に力を入れたようだ。一般参加者の人数は女声22名に男声24名となり、聖歌隊を加えた学生とほぼ同数。しかしオケだけはそこそこの人数がいてレベルも落ちていないのが幸いだった。

演奏の方だがおそらくコロナの影響で練習回数が少なかったとみえて、いつもよりかなり曲数を減らしていたのが残念。いつもはすべて歌っていた第一部でも1曲省かれ、第2部は10曲をカット、第3部のカットはいつもと同じく4曲をカットして抜粋での演奏だった。そして驚いたのは第一部6番のアリアを本来のバスに代えてアルトが歌ったこと。しかしこのアルトソロはすごみが効いて本気度が高く、後のソリストを本気にさせたと思う。とにかく最後まで息をつかせぬ展開で、テノールも150%の力のこもったソロを聴かせた。合唱もオケもそれに引きずられるように熱演して、最後のトランペットソロもハイレベルで拍手をもらっていた。しかし数年前の完璧な演奏で自然に拍手がわいたのにくらべると、細かいミスが耳についたので私は拍手しなかった。冒頭部分で音が不安定になったところがあり、語尾の長音符で音が下がったし、旋律も音を置きにいった感じで滑らかさに欠けた。後半でも音の不安定なところがあった。全体としてよく頑張ったとは思うが、途中で拍手をしたくなるほどではないと感じた。

また、前回までソプラノソロを17年にわたって務めていた佐竹由美さんが今年3月に亡くなられたこともこのメサイアにとっては大きな出来事だった。プログラムにもそのことが掲載され、冒頭のチャプレンのお祈りでも触れられて、哀しみを新たにした。そのこともあって全員が実力以上のものを出し切った演奏だったと思う。

出演は、指揮 上野正博、S 隠岐彩夏、A 山下牧子、T 小貫岩夫、B 久保和範、チェンバロ 大藤玲子の皆さん。

いきっつぁんのプロフィール:早稲田大学卒業。在学中混声合唱団に所属。現在はレクイエム・プロジェクト東京いのりのとき合唱団、日本ラトビア音楽協会合唱団ガイスマに所属。