第72回東西四大学合唱演奏会を聴きに行ってきました。東京では4年ぶりとなる開催。ようやく日常の東西四連が戻りつつあるのは嬉しいことです。
まずはエール交歓。エール交歓を聴いただけで、その年の演奏が予想できるものです。
同志社は20数名しかいないのに、鋭い響きの良い声がビンビンと響いてきます。さすがは「声の同志社」です。
ワグネルは50名を超える陣容。その割には落ち着いてしっとりとした塾歌になりました。1年生が半分近くを占めるので、初ステージが四連という団員が多いはず。おそらく緊張感があふれるのは仕方がないことなのでしょう。しかし、ワグネルらしい柔らかな良い声は健在です。
関学は30名強の合唱の原木を、さらに彫琢して声量を削り形を整えた印象。不純物をできる限り排除し、透明な美しい声を目指す。これも関学らしい音楽の作り方です。
早稲田は相変わらず「暴れ馬」。40名弱にしては声量が慶應以上。1番はユニゾンなのに音がいくつも分かれて聞こえるのも早稲田流。学生指揮者が指揮のセオリーを全く無視して力いっぱい振りまくるのも早稲田らしいです。でも昔よりは大人しくなりましたかね。
単独ステージはまず同志社。オンステ人数は26名。題名は「東欧の響き~東ヨーロッパ男声合唱曲集」となっていますが、冒頭がハンガリーのコダーイだっただけで、他の曲は全てスロヴァキアのエウゲン・スホニュの作品です。不勉強ながらこれまでスホニュという作曲家の名前を聞いたことがありませんでした。伊東恵司先生はどこからこういう曲を探してきたのでしょう。初めて聴く曲ばかりでしたが、異国情緒の民謡感あふれる世界を表現していました。
やはりテナー系を中心にしたのびのびした声で、26名しかいないのに、つややかにホール中に広がる響きは同志社ならではです。ハイCもバッチリ出ています。でもちょっと心配なのは、昨年19人いた新入生(つまり今は2回生)が10名になってしまっていることです。今回1年生7名全員もオンステしていたようですが、7名では少ないか。団員名簿に載っていないメンバーがいると良いのですが。もっと部員を増やして、同志社の声が一層充実するのを願ってやみません。
慶應は1年生26名を含め56名でのオンステ。今年は1年生も全員オンステさせる方針と聞きましたが、冒頭の「ふんわりと」から、柔らかく優しく柔らかい声が聴こえてきました。約半数が1年生で、入団してからまだ3ヶ月も経っていないのに、ここまで揃ったワグネルトーンを響かせるとは、佐藤正浩先生、小貫岩夫先生の奮闘には頭が下がります。また、学生指揮者や、各パートリーダーの技術系の奮闘も、並大抵ではなかったことでしょう。しかし、毎年このペースで新入生が入ってくれば、往年の100名体制も現実的になってきます。今回の経験を活かし、今後の26名の発展と、来年以降の新歓に期待大です。
演奏はメリハリのきいた曲作りで、フォルテとピアノ、そしてテンポの緩急をはっきりとつけた、佐藤先生の表現の意図が明確な演奏となっていました。ここでもよく1年生がついてきているのが驚きです。「雪明りの路」の名演奏の一つと言っても文句はないでしょう。
関学の「Barbarshop Showtime!」は21名でのオンステ。1年生を除いても25名いるはずですから、オンステ者を絞ったのでしょう。良く揃ったハーモニーと、カジュアルな雰囲気で、4校の中で異彩を放っていました。声は、関学にしては良く出ている印象でした。他は、広瀬康夫先生のMCがちょっと気に障ったので、これ以上は述べません。
早稲田は実オンステ者が32名。名簿では34名いることになっていて、そのうち1年生が3名なので、そのあたりで多少の出入りがあったと思われます。まさか3名しか入部しなかったということはないでしょう。
曲は三宅悠太先生作曲・指揮の3曲。三宅先生は最近コンクールでも引っ張りだこになってきています。今回四連にも登場したことで、ますます人気に拍車がかかることでしょう。
ワセグリの演奏は、大爆発することもなく、早稲田にしては洗練された曲づくりをしていました。最近のワセグリの演奏はレベルが上がってきているのですが、実は私はそれがちょっと不満で、「上手なワセグリ」はワセグリらしくないと思うのです。粗削りで、野性的で、大爆発してこそワセグリです。故福永陽一郎先生、小林研一郎先生、荻久保和明先生たちの、血と汗がほとばしるような演奏こそワセグリなのです。今回の演奏は大変素晴らしかったのですが、個性と多様性を認め合う四連という場では、もっとワセグリらしさがあってもいいと思うのです。
合同の高谷光信先生の「終わりのない歌」は、大人数の合唱ながら、中間部のppを繊細に扱っていたのが印象に残りました。
恒例のステージストームですが、同志社は「Every time I feel the Spirit」慶應は「偽ヨイク」関学は「U Boj」早稲田は「斎太郎節」でした。慶應がスラバではなかったのでちょっと驚きでしたが、「偽ヨイク」もなかなかカッコいい。惜しむらくは、さすがに1年生の声がまだ出来上がっていないのか、各パートのロングトーンの部分が今一つ力不足でした。今後に期待です。