【2022年11月22日江戸川区総合文化センター 小ホール】vocalconsort initiumの6th Concertを聴いた。2015年に谷と柳嶋2人の合唱指揮者によって設立された室内合唱団だが、メンバーはそれぞれ合唱指揮などで活躍する人たちで知った顔も多い。第1回演奏会のディストラー「死の舞踏」を聴きそこなった(リハだけはこっそり聴いたが)のが返す返すも残念なのだが、第4回からは続けて聴いてきた。今回はそれまで以上にハイレベルの演奏会で、今年聴いた中でも最上位にはいる濃い内容だった。今回の演奏会のテーマは「平和」。その内容は曲目を並べただけで十分推測できると思う。
まず第一部前半の3曲が柳嶋さんの指揮で、デュサパン「死の影」、ホリガー「詩篇」、エッシャー「平和のほんとうの顔」。続いての3曲は谷さんの指揮でペルト「主よ平和を与えたまえ」、シェーンベルク「地上の平和」、シルヴェストロフ「歓喜の歌」。死から始まって歓喜に至る流れは心憎い構成。どれも何度の高い曲ばかりだが、破綻なく聴いたことの無いような精度の高いハーモニーを聴かせてくれた。
二部の初めにゲスト演奏としてスネアドラム奏者の澤田守秀氏の自作自演があったが、そこに至るいきさつを知らないものとしては何故?という疑問が残った。
第二部は主催のあたりの恩師でもあるイェンセン氏の客演。一部の曲目を聴いて指揮者本人が選曲したという構成で、ホヴランド「イェルサレム」、ブラームス「ああ哀れなこの世よ」、ニューステッド「私は平和をあなたたちとともに残してゆく」、サンドストレーム「新しい天と新しい地」、ヴォルフ「最後の願い」、メンデルスゾーン「主は天使たちに命じた」。聖書をテキストとする曲の間に聖書ではないが宗教色の濃い曲をはさみ、その3曲のセットを2組連ねた構成。息つく暇もないままに一気に演奏されたので時間を忘れて聴いていた。
すべての合唱曲がアカペラで、難解な和音が続く現代曲ばかり。シェーンベルクが古典と言ってもよいような構成は驚くばかりだった。回を重ねて益々洗練されてきたこのアンサンブルはさらに高みを目指していくことになるのだろう。現代音楽のプログラムということで、現代音楽の会場で見かける方が複数顔を見せていたし、来場者には若い人が多かったのも今後を期待させる。次にはいったいどんな演奏を聴かせてくれるのか、楽しみが増えた。
蛇足だが、場面転換での谷さんのトークが簡潔で気持ちよかった。プログラムの写真の片隅に先日亡くなられた西久保さんの姿を見つけて感慨深かった。
指揮は、柳嶋耕太、谷郁、モルテン・シュルト=イェンセンの皆さん。
いきっつぁんのプロフィール:早稲田大学卒業。在学中混声合唱団に所属。現在はレクイエム・プロジェクト東京いのりのとき合唱団、日本ラトビア音楽協会合唱団ガイスマに所属。