マニアックなネタで失礼します。スピーカー自作しました。スピーカーの基本として、いつか作りたいと思っていた「ロクハン」(6.5インチ=16.5cm)フルレンジ一発です。実はスピーカーユニットとエンクロージャー(スピーカーボックス)は前に買ってあったのですが、気持ちが乗らず、三連休でようやく残りの部品(吸音材・ネジなど)を買い足して、なんとか完成にこぎつけました。
「ロクハンフルレンジなんて半世紀前のオーディオマニアかよ」と言われてしまいそうですが、フルレンジにはこだわりがあるのです。と言いつつ「音楽室」のメインのスピーカーはDENONの3ウェイですけど。だってフルレンジ一発のスピーカーなんてもう完成品はほとんど市販されていませんから。
学生時代最初に買った3ウェイのスピーカーがいわゆる「ドンシャリ」で、低音と高音は出るけど、人間の声が聞こえない。やられたー素人向けだ。早々に友人に譲って、次はしっかり試聴。すると、アメリカのAURATONE(オーラトーン)という12cmフルレンジ一発が一番自然な音に聞こえる。聞けばこれはスタジオ用で、ミックスダウンした音が家庭用の貧弱なステレオだとどのように聞こえるのか確認するために、わざと低音も高音も出ないようにしてあるという。考えてみれば木造アパート暮らしで、迫力ある音なんて出せるわけないじゃん。これで決まり。(AURATONEは最近復刻版が出ています)
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また、私の母がいつも防災ラジオを持ち歩いてFMを聴いていた話は前に書きましたが、ポータブルラジオのひどい音質でも「あら、この人いい声してるわね」と確かにわかるのです。再生周波数帯域が広いことと「良い音」とは同じではないのです。
自作スピーカーといえばバックロードホーンを思い浮かべる方もいると思いますが、どうもオーディオには疑似科学みたいなものがはびこっているように思えて、私はバックロードホーンの理論に納得できないのです。音量と低音域は増強されるとしても、音速が無限大でない限り、全面の音と裏側から出てきた音が干渉するので、他のメリットはないのでは?他にも、スピーカーケーブルで音が変わるという方がよくいますが、2ウェイ、3ウェイのスピーカーの中にはスピーカーケーブルよりはるかに細くて長くて銅の純度も不明なディバイダーのコイルやコンデンサーが入っているのですよ。その中身を追求しないでケーブルだけ変えて音がそんなに変わるものですかね?私には区別は全くつかないのですが。それにダブルバスレフ型?周波数特性がなるべくフラットになるようにスピーカーユニットの最低共振周波数とバスレフポートのヘルムホルツ共振周波数はなるべく一緒にすべきなのに、共振周波数が違うバスレフダクトを複数設置するなんて訳わかりません。みんな「王様は裸だ」と言えないでいるだけなのでは?
ロクハンで基本に帰ると決めたことだし、そもそもデスクトップにバックロードホーンは置けないし、密閉型に適合できるロクハンのスピーカーユニットはこの世に少なく、それだけの内容積のエンクロージャーも置けないので、結論はバスレフ型。
最後に悩んだのは吸音材の量。吸音材を入れないと定常波(定在波)が生じて特定の周波数で共振が起こります。でもネットではバスレフで「吸音材を入れすぎて失敗」という方が結構いらっしゃる。私なりに解釈すると、吸音材を入れると内容積が疑似的に増えてヘルムホルツ共振周波数が下がります。スピーカーユニットの最低共振周波数>ヘルムホルツ共振周波数となると、スピーカーはより低い音を再生しようとしますが、ユニットの最低共振周波数以下の低音はほとんど増えません。一方でより高い周波数から減衰が始まってしまいます。結局は低音が出ないスカスカの音になるのではないかと思うのです。ではどうするか。ネットで金魚の水槽のフィルターのスポンジを使ったらうまくいったという方を見つけました。おお、それはいい。それに何より安価(笑)。
ドイツ製のVISATONのロクハン。衝動買いしてしまいました。foは80Hz近辺。もともと重低音は想定されていません。中高域に山があって、聴感と一致しています。湿度が高い日本でも良好に鳴り続けてくれるかなぁ。
単体で置くとこじんまりした印象。でもユニットの縁がしっかりしているので、質実剛健という感じ。(某F社製品のユニットの縁がちょっとたよりないので……でも某F社さんにはいつも大変お世話になっております。失礼お許しを)
裏面。耐入力60Wのわりにマグネットが案外小さい。つまりコーン紙は軽いということ。密閉型は無理ですね。
エンクロージャー。厚さ9.5mm。ちょっと薄いかな。そのわりにはしっかりしているけど、箱鳴りしないかなあ。バスレフポートはご覧の通り約5cmしかなく、やはり重低音は狙っていません。正確に計算はしていないけど、おそらくfo=80Hzに近い感じです。
接続コードの先はきちんと「ハンダ上げ」。こういう丁寧な作業が結果につながります。これは疑似科学じゃありませんよ。
当然ながらターミナルへのハンダ付けもしっかり。小学校5年生から鍛えていますから。
スピーカーユニットと接続完了。
吸音材用の金魚の水槽のろ過マット。ネットで調べてみるもんだ。
内面にろ過マットを敷き詰めた後の様子。
ユニットを固定して完成!
セッティング後。お見苦しいところはご容赦を。
裏面。なかなか凄いことに。でもこういうコードだらけの様子を見るとなぜかテンションが上がるのは私だけ?
さて、結果は?
予想通り、低音も高音も出ないのでロックには向きません。室内楽でJBLより良い音が出れば素晴らしいと思っていたのですが、なんとフルオケでも弦の音が違う。JBLと比べると別のオケみたい。特にウィーンフィルのキラキラ感が一層際立ちます。迫力が足りない分、どちらを選ぶか難しいところですが、思った以上の結果にびっくり。声楽ならロクハンの勝ちかもしれません。K山君ごめんね。でもスピーカーってつくづく奥深いのですね。