早慶徹底比較!上田真樹先生作曲『終わりのない歌』

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関西学院グリークラブ、慶應義塾ワグネル・ソサィエティー男声合唱団、同志社グリークラブ、早稲田大学グリークラブ(50音順)の四団体は、東西四大学合唱連盟を結成し、1952年から70年にわたり日本の大学合唱団のトップランナーを走り続けていることについては大方ご同意いただけることと思います。2020年、2021年は東西四大学合唱演奏会がコロナのため開催されず、ホールで同時に比較して聴く機会がなかったのですが、YouTubeに早慶で同じ曲をアップしていることに気づき、大変興味深かったので、ぜひ聴き比べていただきたく、紹介いたします。曲は昨今大人気の上田真樹先生作曲の男声合唱組曲『終わりのない歌』です。

まず聴いて驚きました。まるで全く違う曲を歌っているかのようです。

早稲田大学グリークラブ(以下「ワセグリ」)は2011年11月27日(日)東京文化会館大ホールでの第59回定期演奏会の委嘱初演(指揮:高谷光信 ピアノ:塩見 亮)です。

何と言ってもまず声が浅くて雑です。声楽的ではない地声がたくさん混じっています。アインザッツ(出だし)も切りもバラバラ。発音も日本語なのにバラバラで変な母音が混じっています。ピアノ伴奏があるのにピッチが合っておらず音程がひどく悪いので、ハーモニーがきちんとハモっていません。ff(フォルティシモ)は明らかに怒鳴って力まかせに声をぶつけている者がいて破綻しています。おそらくリポビタンDの飲みすぎだと思われます。メロディーラインのフレージング(歌いまわし)もゴツゴツでヘタクソです。

早稲田大学グリークラブ 2011年11月27日(日)東京文化会館大ホール 第59回定期演奏会 指揮:高谷光信 ピアノ:塩見 亮

慶應義塾ワグネル・ソサィエティー男声合唱団(以下「ワグネル」)は2019年12月15日(日) 東京芸術劇場コンサートホールでの第144回定期演奏会(指揮:清水雅彦 ピアノ:前田勝則)です。

指揮者は常任指揮者の佐藤正浩先生ではなく、客演の清水先生ですが、清水先生は全日本合唱コンクールで都留文科大学を12年連続金賞に輝かせ、ついに昨年(2021年)にはコンクール命で常勝の盟友・関西学院グリークラブを破り日本一になっています。ワグネルは、トータルで結果を出そうとする関西学院グリークラブなどとは異なり、一人一人を声楽家的に鍛えた個性の集合体のような団体ですから、必ずしもハモることは得意ではないのですが、清水先生のご指導の賜物か、ハーモニーがクリアに響いています。声楽的に優れているのは元々折り紙つき。フレージングのうまさも伝統のひとつです。ワセグリ、ワグネルともにコンクールには出ない方針をとっていますが、もしもこの演奏でコンクールに出場したとしたらワグネルの圧勝でしょう。

慶應義塾ワグネル・ソサィエティー男声合唱団 2019年12月15日(日) 東京芸術劇場コンサートホール 第144回定期演奏会 指揮:清水雅彦 ピアノ:前田勝則

しかし、このワグネルの演奏には「感心」しますが、ワセグリには「感動」を感じませんでしょうか。ワグネルの演奏にも感動は大いにあり、素晴らしい名演奏だと思いますが、ワセグリには理屈ではありえない「魂の合唱」があるのです。ワセグリがなぜこのような感動を生み出せるのか、説明する適当な言葉が見つからないのですが、少なくともワセグリはこの『終わりのない歌』に対して、より深く共感し、歌うことを愛し、より強い力で精一杯歌っていることについては比類がないと思うのです。私はワセグリを心から尊敬します。

同じ男声合唱という狭い世界ですが、目指している到達点へのベクトルが、両団では全く違うのです。コンクールのように、どちらが優れているかとか、同じ尺度で測ることはできません。聴衆もどちらを好むのか、一概には決められないでしょう。このような個性を磨きあうライバル関係も素晴らしいと思いませんか。



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