福永陽一郎先生の“十の詩曲”より『六つの男声合唱曲』(同グリ第14回東西四連、ワセグリ第36回定演)(Echotamaのブログ)

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福永陽一郎先生を語るうえで絶対に外せないのが、革命詩人による“十の詩曲”より『六つの男声合唱曲』(作詩:安田二郎、作曲:ショスタコーヴィチ作曲、編曲:福永陽一郎)です。訳詩ではなく作詩であり、その作詩者の安田二郎という名前は福永先生のペンネームで、戦死した二人の友人からとられたという逸話をご存じの方も多いことでしょう。

私の手元に第30回東西四連のプログラムがあり、そのときの合同演奏がこの曲なのですが、福永先生自身による曲目解説に「ロシア革命を離れて“普遍性”を持つように改作された歌詞」とお書きになっているので、原詩と原訳が先にあり、その改作であると宣言しているわけです。さらに引用すると「ショスタコヴィッチがこの音楽に盛り込んだ、人間の苦難への真の同情、未来への希望といったものの力強さは、永遠の生命を持つもののように思える」と書かれています。ロシア革命はもちろん知らず、ソヴィエト連邦も崩壊し、第二次大戦を体験した福永先生のご逝去から30年以上たった現代でも、ウクライナをはじめ世界中で止まぬ戦禍を乗り越えて平和を希求する希望を高らかに歌い続ける曲として、この作品は変わらぬ価値を持ち続けているのです。

ぜひ歴史に残しておきたい演奏としてご紹介したいのは、福永先生がお振りになった最初と最後の演奏です。

同グリは第14回東西四大学合唱演奏会(1965年)の演奏(男声版初演)です。

YouTube時代になる前まで「伝説の名演」と言われていたものです。上述の第30回東西四連のプログラムでも、福永先生が「私の長い合唱生活の中での、もっとも強い印象として残る名演奏であった」とお書きになっています。副題が「1965年1月29日早暁銃殺されたベトナム少年の霊に捧ぐ」であり、当時はヴェトナム戦争の最中だったのです。ただ単純に「戦争反対」と叫ぶだけよりも、この演奏がどれだけの力を聴衆に与えたか、想像せずにはいられません。これも音楽の力、芸術の力であると私は思います。そして現代に生きる皆さんにもぜひ聴いていただきたいと思います。惜しむらくはステレオ録音が1曲目と6曲目のみで、あとは平板なモノラルで録音状態が良くないことです。また、発声面ではのちの同志社が誇る発声から考えると若干期待どおりではない部分もありますが、戦後20年の1965年という時代背景を考慮するべきでしょう。

ワセグリは第36回定期演奏会(1988年)の演奏です。

この8か月後の東西四連で、同グリの伝説の「月光とピエロ」があり、その7か月後に福永先生はお亡くなりになっています。つまりこの演奏の1年余り後にはもう福永先生はこの世にいなかったのです。腎臓病の悪化と人工透析で体調がひどく悪い中、この渾身の指揮は見事という他はありません。歌っているグリーメンたちも、ワセグリには珍しい抑えた表現から、終曲の「歌」へとなだれ込んでいく爆発力たるや凄まじいものがあります。福永先生も、グリーメンたちも、もう力尽く寸前まで追い込まれてから、最後の馬鹿力を振り絞って、普通の人間には超えられない線を超えている、そんな気がしてなりません。もはや理屈などないのです。人間の可能性と希望を形而上的に示した、ワセグリの真骨頂だと思うのです。感動が溢れてきます。ぜひ聴いてみてください。


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