丸山島根県知事の「国賊」発言について考える(Echotamaのブログ)

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超長文失礼いたします。

もう10日ほど前のことになりますが、丸山島根県知事が阿部文科大臣のことを「国賊」と呼んで話題になりました。理由は、5月の中央教育審議会(中教審)で「国立大学の学費を150万円にすべき」と発言した伊藤慶應義塾長が、再び中教審の委員に選任されたことに対してです。それがSNS界隈で、いまだに「よく言った」「支持します」と盛り上がっているのです。私は慶應出身者なので贔屓目で見ているのかもしれませんが、強烈な違和感を感じます。

丸山知事の認識は3点において不十分です。まず1点目は、伊藤塾長は「『給付型奨学金とセットで』国立大学の学費を150万円にすべき」と主張しているのであって、単に全学生の値上げを主張しているわけではありません。現行の文科省の制度においても、2020年度から始まった大学無償化(高等教育の修学支援新制度)が徐々に拡大されており、2025年度からは扶養内の子供が3人以上なら所得無制限で入学金・授業料を全額支援(返済不要の給付)、2人以下なら住民税非課税世帯(世帯年収270万円以下)は全額、300万円以下なら2分の1、380万円以下なら3分の1、600万円以下なら4分の1が支援されます。また各大学独自の奨学金もあり、島根大学独自の奨学金は確認できませんでしたが、先般学費値上げで話題になった、丸山知事の出身校でもある東京大学では、学費値上げとセットで世帯年収600万円以下は一律無償となっています。600万円が妥当な水準かどうかという議論はあるにせよ、低中所得者への「給付型奨学金」は広まっており、より充実させることに対しては異論はないでしょう(注:財務省は別でしょうが)。ちなみに慶應義塾大学では、代表的な給付型奨学金として、4都県(東京・千葉・埼玉・神奈川)以外出身で事前申請のうえ慶應に受かった学生を対象とする「学問のすゝめ奨学金」があり、所得制限は1200万円です。その他にも多数の給付型奨学金があり、古いデータですが2016年度で8.6%の学生が給付型奨学金を受給しています。「学費がかからないから慶應を選んだ」という学友が私の周辺でも3名いました。国立大学でも同じことをすれば良いのです。

2点目は、富の再分配の視点が欠けているということです。上記で600万円が妥当な水準かどうかと記しましたが、青天井で高所得の世帯にまで対象を広げるべきではないと考えます。丸山知事は「国立大学の学費を値上げすると階層の固定化が生じる」と仰ったそうですが、現に今、階層の固定化が生じています。島根大学の学生の世帯年収はわかりませんでしたが、東大では2023年の東大学生委員会の調査では、世帯年収が1050万円以上と答えた学生は42.5%に上るそうです。いまや地方の公立校から地頭の良さで東大に入る学生は絶滅危惧種となりつつあり、東大生の7割は中高一貫校で占められているといいます。小学校から塾に通わせ、中高一貫校の学費を払い、さらに鉄緑会等の大学受験予備校の学費を払えた世帯の子供たちが東大に進んでいるのです。おそらく年間150万円くらい払っているでしょう。国の政策として優秀な学生を育てるために国立大学に税金を使うのは理解できるとしても、子供からお年寄りまで、低所得世帯や生活保護世帯でも払っている税金(もちろん消費税が含まれます)が高額所得者の懐に分配されるということが適切なのか、ぜひ想像していただきたいのです。しかも東大を筆頭として国立大学は一般的に私立大学よりも卒業後の選択肢が多く、高所得になり得る確率が高いと想定されます。国立大学の学費は国庫に納める謂わば目的税ですから、受益者である学生に相応の負担があることは自然なことだと思います。もちろん低所得世帯の学生がいれば、奨学金を給付する前提です。

3点目は、大学の将来像という視点も欠けていることです。伊藤塾長は「教育環境の整備には学生1人あたり300万円以上は必要だと考えている」と述べていますが、随分控えめな数字だと思います。大学生一人あたりで投入されている税金は、島根大学は2012年という古いデータですが約193万円、授業料が約54万円ですから、合わせて一人当たり250万円もありません。東京大学は税金が約727万円、学費が値上げ後で約64万円で、合わせて約800万円弱ということになります。ちなみに慶應は補助金(税金)が約15万円、授業料等が約145万円(加重平均)で、寄付などを含め約200万円程度のようです(注記のないものは2021年データ)。東大の高さと慶應の低さが目立ちますが、これがアメリカになると、例えばスタンフォード大学だと、授業料だけで500万円(もちろん給付型の奨学金が充実しており、スポーツで貢献することも条件になり得るそうなので、佐々木麟太郎君も給付対象かも)で、寄付や企業などからの研究開発投資が1500万円、他に資産の運用収益なども加わります。つまり学生一人あたり年に約2000万円は使える計算です。やるせないのは、研究開発投資をしている企業には日本企業も多くあり、それが研究の質の向上→学生の質の向上→卒業生の収入増→寄付の増加→優秀な研究者の雇用→研究開発投資の増加という好循環につながっているということです。よく世界大学ランキングとかで日本の大学の低さが指摘されますが、これだけ懐事情に差があれば、日本に海外から優秀な研究者が集まってくれませんし、研究の予算や質も太刀打ちできるわけがありません。このような高等教育の国がこれから発展していけるでしょうか。

島根県には4年制大学は島根大学と島根県立大学しかありません(私立はありません)。丸山知事には、もっと富裕層から島根大学・島根県立大学に対し、富裕世帯(島根にもいるでしょう)には学費の更なる負担を求め、寄付金を集め、企業からの投資を呼び込むことこそが、島根県知事としての政策に相応しいのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

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