colori×アンサンブル・ヴォカル・アルカイク=東京 ジョイントコンサート いちゃりばちょーでー(いきっつぁんの演奏会探訪)

スポンサーサイトも訪れてください↓

Amazonプライム「30日間の無料体験はこちら」

【2月19日タワーホール船堀大ホール】19日は「colori×アンサンブル・ヴォカル・アルカイク=東京 ジョイントコンサート いちゃりばちょーでー」を聴いた。「いちゃりばちょーでー」とは沖縄方言で「一度会えば、みんな兄弟」という意味だそうだ。coloriは2013年創設の沖縄の合唱団。創設者の新里裕貴さんと野本立人さんがTokyo Cantatoで出合ったことが事始めで、さらにいくつかの出会いがありジョイントコンサート開催に至ったとのこと。一期一会の出会いから始まったことなのでこの副題がついたそうだ。

coloriにとって県外の合唱団とのジョイントは初めてとのこと。どんな演奏を聴かせてくれるのか楽しみに待っていたが、前半は賛助出演4団体の演奏。列挙するとフレーベル少年合唱団(指揮 佐藤洋人、ピアノ 吉田慶子)熊遊舎女声合唱団うりずん(指揮 野本立人、ピアノ 筧千佳子)丸紅本社合唱団(指揮 清水昭、ピアノ 筧千佳子、打楽器 篠崎智)合唱団ひぐらし(指揮 野本立人、ピアノ 岩本果子、打楽器 篠崎智)と続いた。皆沖縄にまつわる曲を含む演奏で、colori歓迎の意を示していた。フレーベル少年合唱団を聴くのは初めてだった。多くの児童合唱団がほとんど少女合唱団になってしまったのに、ここは少年合唱団を維持していて2年生から5年生までの51人がさわやかな歌声を聴かせてくれた。続く「うりずん」はその名も沖縄の春分から梅雨入りまでの季節を現す名前だそうだ。若夏より少し前の時期ということだろうか。野本さんが指揮する6つの合唱団が合同して臨時に編成されたというがしっかりそろっていて聴きごたえがあった。新編曲の「童神(わらびがみ)」が初演された。丸紅本社合唱団も聴くのは初めてだが今日では職域合唱団は珍しい存在になってしまった。高齢化は避けられないが稼働を続けているのには頭が下がる。ひぐらしは何度も聴いている実力派だから安心して聴いていた。信長さんの「風わたる、島々のうた」。沖縄から始まって世界の島々を巡り沖縄に戻って終わるという心憎い演出。

賛助演奏を聴いただけでも一巻の演奏会だがここからが本番。まずは野本立人さんの指揮、筧千佳子さんのピアノでアンサンブル・ヴォカル・アルカイク=東京により「混声合唱のための『三善晃合唱曲選』より」4曲。これは三善さんの生前に出版されていなかったものを集めた曲集だそうで、聴きなじみのない曲ばかりだがバラエティに富んでいて面白かった。中でも栗山文昭さんの還暦祝いに初演されたという「『なみだ』・と」は小学生の書いた「なみだ」という詩とそれに対する宗左近さんのコメント、さらに作曲者自身の言葉まで作曲されているというおもしろい曲だったのが印象に残った。

次いで新里裕貴さんの指揮、松本陽佳里さんのピアノでcolori。12名の少数精鋭で指揮者も並んで立って一緒に歌う場面もあり、いろいろ工夫しながらの演奏で、しかし美しいハーモニーは印象的。ゆったりとして曲が多いのは自分たちの特徴を生かした選曲だろうし、やや迫力不足も人数としてはやむをえまい。

最後は2団体の合同演奏で野本さんの指揮で萩京子さんの「みるく世がやゆら」。名前は知っているが聴くのは初めて。今は平和でしょうか? という問いかけは、米軍基地の中で生きている様な沖縄の人たちにとって心底からの問いかけなのだと思った。本土では戦後70年余り平和を謳歌してきているが、それは世界の紛争から目を背けて自分たちだけの平和を謳歌していたにすぎない。実はそれは一時の事でしかなく、世界が平和にならなければ本当の平和などないのだ、という沖縄の叫びを受け止めたいと思った。

次いで新里裕貴さんの指揮で瑞慶覧尚子さんの「うっさ くわったい」の5曲が心にしみた。

合同演奏には賛助団体も一緒に歌うのかと思っていたが、さすがに200名を超える人たちを一緒にはできなかったらしい。もともと2団体のジョイントが本筋だから後半だけでよかったものに前半の4団体の演奏が個別に加わった形だった。しかしアルカイクの構成メンバーはほとんどひぐらしのメンバーと重なっていたようだ。いろいろな事情でこういう構成になったのだろうが、あまり例を見ないスタイルの演奏会で、それなりに聴きごたえのある演奏会だった。

3月26日には浦添市のてだこホールで沖縄公演が開催される予定。

いきっつぁんのプロフィール:早稲田大学卒業。在学中混声合唱団に所属。現在はレクイエム・プロジェクト東京いのりのとき合唱団、日本ラトビア音楽協会合唱団ガイスマに所属。