第72回東京六大学合唱連盟定期演奏会(Echotamaのブログ)

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【2023年5月6日:ウェスタ川越】第72回東京六大学合唱連盟定期演奏会を聴きに行ってきました。立教12名、東大9名、法政1名、慶應32名、明治11名、早稲田28名。計93名。これがコロナの暴風雨が吹き荒れた後の六大学男声合唱団の全容です。あまりの傷跡の深さに嘆息するばかりです。現役学生の忍耐を讃えるとともに、今後の速やかな復活を祈ります。

ステージ上方には以前のように6校の団旗が並びました。休団中の法政は在学中の元団員1名のみでしたが、エール交換ではステージ上の全員が法政大学校歌を歌いました。粋な演出に敬意を表します。

立教は少人数ながら、指揮者の髙坂徹先生が大きく揺らすリズムに良く反応していました。厳しい環境の中でも、綿密な練習を積み重ねてきたことがよく判る好演と言えると思います。

東大は法政の1名を加えて総勢10名での演奏。ルネサンス期のカウンターテナーのアンサンブルにおいては比類がありません。今回においても、わずか2名のCantus(カウンターテナー)の声がホール全体に美しく響いていました。素晴らしいです。

慶應は原田太郎先生が降板し学生指揮者の指揮でした。2日前のゲネプロは原田先生が振っていたので、急なアクシデントでしょうが、理由は私は聞きませんでした。良い声でまとまった演奏を聴かせてくれたので、及第点はとれたと思うのですが、あえて苦言を。例えばIm wunderschönen Monat Mai(この素晴らしく美しい5月に)の“w”のセクシーな唇の震え、“sch”の柔らかな摩擦、“ö”(オーウムラウト)の甘くとろけるような響き、いずれも物足りなく思いました。シューマンがクララへの思いにこめた、愛の喜び、悦楽、恍惚、官能がもっと表現されてほしかったのです。畑中良輔先生ならば違った、と老害をまき散らしてしまうのかもしれませんが、原田先生も舞台ドイツ語をオーストリアで勉強された由。学生指揮者のせいにしてしまうのはかわいそう。近年は淡白な演奏が好まれる傾向にあるので、時代のせいなのかもしれません。

明治は少ない人数に加え、声が今一つ前に出てこない感がありました。しかしながら、持ち前の歌謡性と親しみやすさは健在で、メロディーメーカーの上田真樹先生の曲を魅力的に歌いこなしていたのには好感が持てました。

早稲田はJ-POP,ロックのメドレーでしたが、結局何をしたいのか、何が言いたいのか、私には良く判りませんでした。曲の素晴らしさを伝えたいのであれば、オリジナルを聴けば十分です。ロックだからいけないということはありません。慶應ワグネルだってロックミュージカル“Hair”をやっていますが、これにはミュージカルの表現の可能性の拡張と、自由とは何かという問い、カウンターカルチャーへの理解という深みが伴っていました。自分たちだけで歌って楽しいものということであれば、お客様に聴かせる必要はありません。以前の「ワセグリ学芸会」よりはマシになりましたが。

このように、人数は大きく減ってしまいましたが、良くも悪くも各団の個性はほぼ保たれています。人数さえ戻れば(そして法政が活動を再開すれば)、また百花繚乱の個性が益々花開いていくものと期待しています。