三多摩青年合唱団「あめあがりコンサート2022」(いきっつぁんの演奏会探訪)

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【2022年10月30日ルネこだいら大ホール】10月30日の日曜日に三多摩青年合唱団の「あめあがりコンサート2022」を聴いた。東日本大震災復興支援第12弾、ウクライナ人道支援第1弾と副題された演奏会で、被爆・戦後15年委嘱作品の「風の旅」が初演されるというので注目した。1963年に設立されたというこの合唱団は、多摩地域でうたごえ運動の一翼を担うのが目的だったという。近年は委嘱作品の初演にも取り組み、今年から赤坂有紀さんを常任指揮者に迎えた。もっとも赤坂さんは2012年から継続して客演として指揮してきている。2010年の栗山さんの客演以来栗友会との関係が強いようだ。

うたごえ運動の合唱団というと、演奏レベルよりも社会的なメッセージをともに歌うことに重点を置くというイメージだったのだが、さすがに運動の中核を担ってきた合唱団だけあって演奏レベルは高い。指導陣のプロも加わってはいるものの、40人ばかりの合唱で1200席の大ホールを十分に響かせていた。チケットも完売していてさすが運動の動員力はすごい、と思った。

1ステは寺島陸也さんの「朝顔の苗より」から4曲の抜粋。アカペラの響きが美しく響いたが、組曲ではないとは言うものの一曲毎に拍手が起きるのはいただけなかった。拍手といえば合唱団が入場してくると拍手が起きたのだが、半分くらいの所で途絶えてしまう、というのにも違和感を感じた。何か義理で拍手しているのでは?と感じさせる現象だった。

2ステがメインの「風の旅」。指揮者の赤坂さんが作詩のドリアン助川さんと作曲の寺嶋陸也さんを呼び出すと、トークを二人に任せて引っ込んでしまったのには訳があった。指揮を寺島さんに譲り、赤坂さんは合唱団の服に着替えてソリストを務めたのだった。この曲は被爆75年の2020年に初演すべく準備されていたが、コロナ禍によって中止を余儀なくされ、今回迄延期されていたという。7曲に別れ30分に及ぶ合唱曲としては大曲で、「原爆」も「戦争」も言葉としては使われることなく、すべて風が見ていたという想定での歌詞が続く。重いテーマを何とか普遍的な表現にという意図はしっかり伝わっていたが、組曲で20分、という規模を大きく上回る作品はなかなか再演が難しいかもしれない。

3ステは「ふるさと・大地を想う」と題してのオムニバスステージ。赤坂さんが衣装替えして再び指揮者として登場。アイルランド民謡の「よみがえれ我が大地」が合唱で歌われると、合唱団が退場して特別ゲストのオクサーナ・ステパニュックさんが登場。ウクライナ人で日本のオペラで活動している方。日本ラトビア音楽協会主催のウクライナ支援チャリティコンサートでもバンドゥーラの弾き語りを披露された方だ。私は出演できなかったのでその演奏は聴いていなかったので、歌声が聴けたのは良かった。2曲歌った後は合唱団に加わり、日本の唱歌「故郷」(信長貴富編曲)では、ウクライナ語に訳された歌詞を独唱した。この訳詩者はナターシャ・グジーさん。思わぬところでまたこの名前を見つけた。最後は「大地讃頌」と寺嶋さんの「一本の木」で終演。

いきっつぁんのプロフィール:早稲田大学卒業。在学中混声合唱団に所属。現在はレクイエム・プロジェクト東京いのりのとき合唱団、日本ラトビア音楽協会合唱団ガイスマに所属。