少し前の話になります。義母が死の床にある中ではありながら、義母の頑張りに甘えて、年始のお酒をいただきました。10月の私の誕生日のときに気に入った「會津ほまれ」です。馬刺し(=馬の生食)を食べる習慣があるところ、という基準で選んでみたらウマかった(きわめて失礼)。正月は、馬刺しは頼まなかったけど「會津ほまれ」はおいしくいただきました。
馬食するところをグーグル先生で調べてみたら、桜肉として鍋にするところは多くあっても、馬刺しとして生食するところは熊本(肥後)、長野(信濃・信州)、福島(會津)に限られてくるようです(他にも山梨、静岡、青森なども情報は見つかりましたが、一般的ではない模様です)。なぜこんなに離れた場所で、しかも3カ所のみ、同一の習慣が存在しているのか、理由が知りたくなりました。
共通点としてまず気がついたのは信州の野沢菜(地元では『おはづけ』と言います)。秋に仕込んで一冬食します。そういえば熊本といえば阿蘇高菜。早春に漬けるパターンもあるようですが、メインは信州と同じ秋仕込みで、これは良く似ています。古漬けになったら刻んで油いためにするのも同じです。會津は、調べてみたら「三五八漬け」というのがありました。雪深い地域なので冬を通して漬ける漬物があるかと思ったら、葉もの野菜とはちょっと違って残念です。
ただ、「おやき」については少々驚きました。信州の郷土料理としてそこそこ有名な「おやき」ですが、なんと熊本にもあったのです。少し山がちの阿蘇が中心ですが、熊本一帯に高菜、切り干し大根、きんぴら、芋あんを具とした店が点在しています。名称は「おやき」ではなく「饅頭(まんじゅう)」ですが、信州人から見ればまぎれもなく「おやき」です。
阿蘇高菜饅頭(まんじゅう)の例 http://shop.ikkyuuhonpo.com/?pid=152172431
さらに圧巻は會津。店が会津若松市に集中しています。見た目は信州のおやきと全く同じ。名称も「おやき」あるいは「つめっこ焼」。練ったそば粉に、きのこや納豆、小豆、野菜などを包み、囲炉裏の灰の中に入れて焼いて食べる、会津地方に古くから伝わる『そば焼きもち』がルーツとのこと。囲炉裏の灰の中、しかもそば粉といえば、「縄文おやき」推しで「元祖」を名乗る長野県小川村と全く一緒ではありませんか。
會津のおやき(つめっこやき)の例 http://www.aizushinkumi.co.jp/matching/category01/02aizu_tsumekkohonpo.html
ここに「餅なし正月」の風習が同じように出てくれば、一層面白い話になります。熊本は見つけることができませんでしたが、會津には一部「餅なし正月」の風習があるようです。
會津から熊本まで1500km。コメがあまりとれずにそば粉で炭水化物を補ったという共通点はあるでしょう。貧しかったという事情もあったでしょう。でも日本で遠く離れた3カ所のみ、独特で共通の馬刺しという風習があるのはやはり不思議です。掘り下げれば、もっと共通点が出てくるかもしれません。
何が原因なのか、このネタは引き続き追及していきたいと思っています。