ここ数日は5月らしい爽やかな風が吹いています。思い出すのは立原道造の詩。まさに今の季節にうってつけです。
爽やかな五月に
月の光のこぼれるやうに おまへの頬に
溢れた 涙の大きな粒が すぢを曳いたとて
私は どうして それをささへよう!
おまへは 私を だまらせた……
≪星よ おまへはかがやかしい
≪花よ おまへは美しかつた
≪小鳥よ おまへは優しかつた
……私は語つた おまへの耳に 幾たびも
だが たつた一度も 言ひはしなかつた
≪私は おまへを 愛してゐる と
≪おまへは 私を 愛してゐるか と
はじめての薔薇が ひらくやうに
泣きやめた おまへの頬に 笑ひがうかんだとて
私の心を どこにおかう?
この詩を立原道造がどこで編んだのか判りませんが、私が連想するのは故郷信州の風と日差しです。立原道造が信州の風と光を思いつつ、この詩を編んだと想像するのは、心がきわめて温かくなるような気がするのです。
湿度が低い信州の風の爽やかさは東京の比ではありません。
日差しは、東京よりもはるかに眩しく感じます。そしてキラキラと光り輝いているのです。空気の純度が違うのでしょう。
この詩にも多くの作曲家が曲をつけていますが、NHK全国学校音楽コンクール全国コンクールで最優秀をとった東京都立八潮高校の小林秀雄先生の混声合唱曲が最も有名と言ってよいでしょう。コンクールの域を超えた素晴らしい名演奏です。当時私は高校2年生で、「こんな演奏ができたらどんなに気持ちよいだろう」と憧れて聴いていました。YouTubeにアップされていましたので共有します。お楽しみください。