合唱がつなぐ縁~レクイエム・プロジェクト編~(by いきっつぁん)

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就職して最初の赴任地が大阪で西宮の独身寮に住むことになった。休日は食事の提供は朝だけなのでおのずとどこかに出かけることになるのだが、大阪よりも神戸の方が近いので三宮あたりにはよく出かけて行った。丁度駅前再開発が進んでいて第二ビルがオープンしたばかり、第三ビルは建築中という時期だった。在任中に第三ビルは完成したが当初上層階は空き店舗ばかりのさびしいビルだった記憶がある。関西には結局7年間お世話になった。その神戸が震災に見舞われたのは私が関西を去ってから12年後だった。

平成になってすぐのころ今度は盛岡支店勤務になった。4年半の勤務期間中に岩手県の北2/3を順次担当していった。沿岸部は北の久慈から南は釜石まで、定期的に訪れていた。私が岩手を去ってから17年後に東日本大震災が起きて、お世話になった昔の担当先の社長も犠牲になった。

私がスマホを持ったのは東日本大震災の直後からである。それ迄かたくなにガラケーも持ったことはなかったのだが、万一の時に連絡がつかないのは困るという家族の要請に従ったのだった。そしてその年の夏にツイッターを始めることになり、色々とつながる中で上田益という人の「レクイエム~あの日を、あなたを忘れない~」という曲のYoutubeでの演奏に出会った。それがこの演奏

1曲ごとの動画だが次々と続きを聴いてしまった。後で知ったがこの曲の神戸での初演の動画だった。思ったのは是非この曲の実演を聴いてみたいと思ったこと、そしてその機会はツイッターで巡ってきた。2011年10月に東京で開催されたレクイエム・プロジェクトの演奏会で、混声合唱組曲「黙礼」の初演演奏会だった。その後この「レクイエム」や「黙礼」を歌うために東北でも活動が始められたと知る。神戸と東北、その両方とかかわりのあった私はこれらの曲を私は歌わなければならない、と強く感じたのだった。しかし八王子に勤務していた私は都心での練習に通う自信がもてなかった。定年を一年後に控えた2012年11月になってようやくレクイエムの練習に通う決心がつき、東京いのりのとき合唱団に加入した。定年後の生活を考えて定期的に合唱の練習に通うことが生活のアクセントになるし、学生時代に参加していた合唱活動ならば続けられるだろうということ、そしてどうせやるならばただ歌うだけではない何か意味のある活動に参加したいという思いが強かった。

以来10年余り、この合唱団に通い続け、全国各地で開催されるレクイエム・プロジェクトの演奏会にはほとんど参加してきた。レクイエム全曲の演奏は数えてみたら33回に及んでいた。同じ曲をこれほどの回数歌うことになるとは思ってもいなかったが、今やライフワークとなった。このプロジェクトに参加したおかげで全く縁のなかった広島や長崎の原爆資料館、沖縄の戦跡などを巡る機会にも恵まれた。演奏会参加を名目に下手するとただの物見遊山になりかねなかった震災被災地の訪問も意味のあるものになった。そしてなにより多くの未知の方たちとの交流ができた。会社勤めだけでは巡り合わなかった方たちとこの活動を通じて知り合うことができたことでどれだけ自分の定年後の人生を豊かにしてくれたことか。学生時代に合唱をやっていてよかったとつくづく思うのだ。

この活動に加わる方たちにはそれぞれの思いがあると思う。ただ曲に対する興味だけの方もあるかも知れない。しかしそれらをすべて包み込んで一緒に歌うことがどれだけ意味のあることか、少しずつでも理解していってほしいと思う。

合唱のありがたさを噛みしめている。

いきっつぁんのプロフィール:早稲田大学卒業。在学中混声合唱団に所属。現在はレクイエム・プロジェクト東京いのりのとき合唱団、日本ラトビア音楽協会合唱団ガイスマに所属。