「ロクハン」フルレンジスピーカー自作顛末記(改)(Echotamaのブログ)

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自宅の寝室に、これまで「音楽室」にあったオーディオを整理して移設しました。これを機に、5年前のスピーカー製作記から現在地までまとめ直しました。

全貌。正確にはデスクトップではなくコタツトップです。夏冬兼用のコタツテーブル。家族からは「お城」と言われています。地震が来たら死ぬだろうな。真ん中のケーブルが繋がっているのが中華製Bluetooth&AM/FMレシーバー。スマホからもこのセットを鳴らせます。

レコードプレーヤーも動態保存。カートリッジがLP末期のT4Pという余り普及しなかった規格なので、「無くなったら困る」と20年前くらいにオーディオテクニカの名機AT102Pを手に入れました。危惧したとおりAT102Pは販売終了となりましたが、T4Pのカートリッジは現在でもいくつか発売されています。LP復権の今、再び出動準備中です。

今回のオーディオの「移築」に伴い、既に役割を終えた愛機たちです。今までどうもありがとう。

スピーカーの基本として、いつか作りたいと思っていた「ロクハン」(6.5インチ=約16.5cm)フルレンジ一発です。

VISATON FR 6.5❝。ドイツ製。輸入品そのまんまと言う感じで送られてきました。

スピーカーユニット前面。縁が厚く、いかにも「業務用」という感じ。質実剛健。

VISATON FR 6.5❝ 背面より。

エンクロージャー全貌その1

エンクロージャー全貌その2

実はスピーカーユニットとエンクロージャー(スピーカーボックス)は前に買ってあったのですが、気持ちが乗らず、連休でようやく残りの部品(吸音材・ネジなど)を買い足して、なんとか完成にこぎつけました。

「ロクハンフルレンジなんて半世紀前のオーディオマニアかよ」と言われてしまいそうですが、フルレンジにはこだわりがあるのです。と言いつつ、メインスピーカーはDENONの3ウェイですけど。だってフルレンジ一発の完成品なんて、今ほとんど市販されていませんから。

私の母がいつも防災ラジオを持ち歩いてFMを聴いていた話は前に書きましたが、ポータブルラジオのひどい音質でも、「あら、この人いい声してるわね」というのは確かにわかるのです。再生周波数帯域が広いことと、「良い音」と感じることは同じではない。人間の声を自然に聞かせることを優先するなら、フルレンジ一発という単純な構成には今でも魅力があると思っています。

さて、何を作るか。自作スピーカーにはバックロードホーン、密閉型、バスレフ型など、いろいろな方式があります。それぞれに音響上の理論があり、長所と短所があります。今回は「ロクハン一発で基本に帰る」がテーマ。しかもデスクトップに置くので巨大な箱は無理です。工作もなるべく単純にしたい。そこで、ごく普通のバスレフ型にしました。

選んだユニットは、ドイツVISATONのFR 6.5❝(8Ω)。オーディオ専門店の通販サイトで衝動買いしてしまいました。紙コーンによるダブルコーン型フルレンジです。公称周波数範囲は70~20,000Hz、定格入力40W、最大入力60W。現在、T/Sパラメーターまで確認してみると、最低共振周波数fs=75Hz、Vas=16L、Qts=1.96。特にQts=1.96というのはかなり高い値です。ざっくり言えば、低音域の振動にブレーキがかかりにくく、共振の影響が強く出やすいユニットです。

そもそもVISATONが想定している用途も、典型的な家庭用Hi-Fiスピーカーというより、天井埋込、PA、電子楽器など。どうやら私は、ちょっと変わった「ロクハン」を選んでしまったようです。でも、ネットワークによる帯域分割なしに、一つのユニットで人間の声の主要帯域を受け持つという単純さには惹かれます。

エンクロージャーは板厚9.5mm。ちょっと薄いかな。そのわりにはしっかりしているけれど、箱鳴りしないかなあ。内寸はおよそ19.1×32.1×16.1cmなので、単純計算で内容積は約9.9L。ただし実際の有効容積は、ユニットやポートが占める体積などを差し引くので、これより少なくなります。バスレフポートは内径約47mm、長さ約48mmです。

バスレフ型では、このポートと箱内部の空気が一種のヘルムホルツ共鳴器として働きます。ただし、ここで注意しなければならないのは、「ユニットの最低共振周波数fsと、ポートの同調周波数fbを一致させればよい」という単純なものではないこと。低域の特性は、ユニットのfsだけでなく、Qts、Vas、箱の実効容積、ポートの同調周波数などの組み合わせで決まります。特に今回のFR 6.5″はQts=1.96というかなり高Qのユニット。典型的なHi-Fi用ウーファーをバスレフ箱に収める場合と同じ感覚で「これが理想値」と一本の数字を決めるのは難しそうです。このへん、自作スピーカーは奥が深い。

スピーカー端子につけるケーブルは丁寧に「はんだ上げ」します。小学校5年生のときから「はんだごて」は鍛えてますから。

スピーカー端子にケーブルをしっかりはんだ付け。

スピーカー端子装着!

スピーカーケーブル装着完了。

最後に悩んだのが吸音材です。箱の内部では反射によって定在波が生じますから、それを抑えるために吸音材を使います。ただし、材質や量、配置によって箱内部の損失なども変化するので、とにかく詰め込めばよいというものでもありません。ネットで調べていると、詰め過ぎて失敗という記事もありました。もったいない。金魚の水槽用の濾過マットを使ったという方を発見。おお、それはいい。それに何よりグラスウールより安価(笑)。

ホームセンターで購入した吸音材用のろ過マット。金魚水槽用。

ろ過マット。これを内部に貼り付けます。

吸音材を貼り付けました。

スピーカーユニットをねじ止めして完成!前面の全貌。シンプルに真っ黒でいい感じに仕上がったと自画自賛。

いよいよ音を出します。予想通り、重低音や超高域まで余裕たっぷり、というスピーカーではありません。ロックを迫力満点で鳴らすなら、もっと適したスピーカーがあるでしょう。

自作したのだから、さっそく遊んでみたくなりました。バスレフポートをいじってみます。この箱のポートは、内径約47mm、長さ約48mm。箱の幾何学的容積を約9.9Lとして単純なヘルムホルツ共振の計算をすると、ポートの同調周波数はおおむね90Hz前後になります。

では、ポートを長くして同調周波数を下げると、音はどう変わるのか。もちろん実際には、ポート開口部の端補正、ユニットやポートによって減る実効容積、吸音材などの影響がありますから、単純計算どおりの数字になるわけではありません。そして先ほど書いたとおり、FR 6.5″のfs=75Hzだからといって、fbも75Hzにすれば「正解」というわけでもありません。

既存のポートを切ったり交換したりするのは怖いので、抜き差しできる延長ポートを作ってしまえばいいと思いつきました。おあつらえ向きに、ダイソーで厚さ0.50mmと明記された黒ボール紙を発見しました。ポートを作って既存のポートに差し込み、全長を約7.5cmまで延ばしてみたらどうなるか。ポートを長くすれば同調周波数は下がりますが、「理論上の正解」がこのユニットと箱にとって最適かどうかは別問題です。

黒ボール紙。110円ポッキリ。ダイソーさんありがとう。

黒ボール紙を細心の注意で寸法通りカッターでカットし、我が家の手作り餃子の餃子めん棒を使い、なるべく正確な丸になるように徐々にボール紙に巻き癖をつけていきます(こういう細かい作業好きなんです)。

7.5cmダクト2本製作完了!

ダクトを刺します。計算通りぴったり。やったね!

ダクト収納後です。なるべく密着するように……頑張ったのですがこれが限界。でも、ちょい見だけではボール紙が入っていることはわかりません。

だったら、最後は聴いてみよう。

マーラーの交響曲第2番《復活》。大編成オーケストラの低音から高音に加え、ソプラノ独唱、アルト独唱、そして女声・男声それぞれの響きから混声合唱まで、一曲で幅広く確認できます。

そしてHuman Leagueの《Secrets》(2001)。シーケンサーのバスドラムがいい音で入っています。低域を中心にロック・ポップスの聴こえ方を確認するにはもってこい。フィリップ・オーキーのヴォーカルも聴きどころ。

歌曲はあえて古い録音(1954)。ハンス・ホッターの《冬の旅》。ピアノとバスバリトンの音が自然に聞こえるかどうか。《復活》には男声ソロがありませんし、聴き慣れたホッターの声がどう聴こえるかは、私にとってとても大事。

いずれも人間の声が入っているのが、私のこだわりです。

元の約4.8cm。

ボール紙を差した約7.5cm。

抜き差しできるので比較は簡単です。

交互に聴いてみます。

おお!

私の耳では、7.5cmにしたほうが低域に厚みが加わり、下まで伸びたように聞こえます。面白い!もちろん、以下はあくまでも「私の耳では」です。スペアナなんて持っていませんから、測定したわけではありません。

万一JBLのA130より良い音が出たら面白い、くらいに思っていたのですが、なんとフルオケでも弦の聴こえ方が違う。《復活》の迫力ではDENONの3ウェイにはかないませんが、JBLと比べると別のオーケストラみたいです。特にウィーン・フィルのキラキラした弦の感じが一層際立ちます。ロクハンでフルオケを聴く価値もある。

バスドラムの低音は、私の環境ではJBLの13cmウーファーのほうがDENONの23cmウーファーよりよく響きます。残念ながら、当然ロクハンはいずれにもかないません。ロック・ポップスだったら、JBLの一人勝ちかもしれません。

また、歌曲を聴いてみます。人間の声は実に自然です。ホッターだけでなく、フィッシャー=ディースカウもヴンダーリヒも聴きました。声楽ならロクハンの勝ちかもしれません。K山君ごめんね。ネットワークによる帯域分割をせず、一つのユニットで声の主要帯域を受け持つことも、このまとまりのよさに関係しているのかもしれません。

《復活》の迫力ならDENON。

ロック・ポップスの低音ならJBL。

そして歌曲なら、この妙なドイツ製ロクハン。

結局、「良い音」って何なんでしょうね。

あらためて、そんなことを考えています。



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