自民党の総裁選挙(Echotamaのブログ)

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また長文の問題発言失礼します。目下の政治的話題は、自民党の総裁選挙、すなわち次の総裁=首相が誰になるかということでしょう。

私は政治の専門家ではなく、普通の一有権者です。少々違っているのは、身内に高級官僚がいてよく一緒に呑んでいたということぐらいでしょうか。

総裁選で誰が首相になろうが、政策はあまり変わらないでしょう。私はむしろ、それは喜ばしいことだと思っています。

小選挙区になって、選ぶ議員は一人になっている。比例代表では党名を投票する。現在有権者が選んでいる第一党は自民党です。自民党にもいろいろな人がいて、昔はケインズ主義者も福祉国家論者もいましたが、現在は、良かれ悪しかれ、新自由主義(ネオリベラリズム)に収れんしつつあります。はじかれた者は「非主流派」になるのです。菅首相が個人的にはどのようなポリシーを持っていたかわかりませんが、就任演説で「自助」「共助」「公助」と言いました。本人の言葉かスピーチライターの言葉かわかりませんが、この一言が全てを物語っています。この順番が重要で、まさに「自助」が第一となり、「公助」が最後になるのは新自由主義そのものです。

無派閥の菅首相が政権運営をしていくためには、二階派など、自分を推してくれた派閥への配慮が必要だということは皆さん想像がつくでしょうが、事はそんなに単純ではなく、それらの議員に投票してくれる支持団体の意向を反映しないと票が集まりません(一応「国民主権」ですから)。また、官僚の意向を酌まないと政権が安定しません(実際は官僚主権なので)。元々自民党政権はこの政・財・官の「鉄のトライアングル」というムラ社会の掟を守ることで、戦後の政治を進めてきました。そのために、お互いツーカーで話が通じる仲良しになるために、たゆまない「接待」が必要になるのです。そうしないといつのまにかカヤの外、村八分になってしまいます。

すなわち、政・財・官いずれもが、「鉄のトライアングル」というムラ社会のツーカーの意思疎通によって、新自由主義に傾いているのが現在の社会なのです。それを無視して政権運営をすることは不可能でしょう。

ムラ社会のツーカーの意思疎通ができれば、森元首相の言うように「議論に時間はかからない」わけですから、大臣なんぞは名誉職のお飾りで十分なわけです。

よい例が、自民党の国会議員有志が選択的夫婦別姓の導入に賛同する意見書を地方議会で採択しないよう求めた文書に、丸川珠代男女共同参画担当相(当時)が署名していたことが明るみにでたときです。2月26日の記者会見で、丸川大臣は、夫婦別姓について「役所がやりたいことを私の考えが邪魔することがあってはいけない」と言いました。じゃああなたは大臣として何をするんですか。しかも「丸川」は旧姓です。「鉄のトライアングル」のなかで、支持団体への配慮という大人の事情があるのはわかりますが、支離滅裂です。こういう人が大臣なんですよ。

「鉄のトライアングル」が壊れたときがありました。細川政権時と、民主党政権の3年間です。民主党は政権運営は初心者です。業界団体は誰に陳情していいのかわからなくなった。官僚も今まで進めてきた政策を有権者にNGを出されてどうしたらいいのかわからなくなった。政府は大混乱になりました。ただ、同情するのは、例えば「事業仕分け」などは、密室の中で財務省の主計局のヒラ事務官が他の省の課長補佐やヘタすると課長を呼びつけてやっていることが明るみに出ただけです。また、菅直人財務大臣があまりにも情報が上がってこないので「イラ菅」になったり、総理になったら大震災の発電所に自分が直接乗り込んだり。お飾りなんだから官僚の作った答弁書を粛々と読んでれば良かったのに、自分から動くから周りは余計に大混乱になる。民主党政権に2度と戻りたくないと思っている人は多いと思いますが、いかに日本の政治が「鉄のトライアングル」のムラ社会の同調圧力に依存しているのかも考慮すべきだと思います。

自民党政権が続くのも嫌だけど民主党にも戻りたくないし、首相は直接選挙で選びたいと思っている方も多いと思います。リーダーシップに優れた天才的ヒーロー待望論も聞かれます。実はご縁ができた政治家の息子さんが優秀な弁護士なのですが、私に直接選挙によるヒーロー待望を語ってくれました。法律の専門家でもそのような考えを持っていることに、私は実は空恐ろしさを感じました。

すでに支持政党を持たない有権者の割合は62.4%に達しています(2021年3月時事通信)。「鉄のトライアングル」やムラ社会とは無縁な人が有権者の約3分の2もいる。彼らは何の権威にも属していない。ここにコロナ禍という脅威が襲ってきている。この無力感、不安、社会全体からの孤立感、破壊性は、新たな権威やヒーロー、あるいは仮想敵を渇望する。このコロナ禍を、1929年の大恐慌に置き換えれば、エーリヒ・フロムの『自由からの逃走』第5章「ナチズムの心理」そのままではありませんか。ドイツがワイマール憲法という世界最先端の民主的な憲法のもとで、ナチを合法的に第一党=政権党に選んでしまったということを、私たちは再度思い出す必要があると思うのです。

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ハンナ・アーレントは『悪夢と逃避』において「リアリティとは、『ナチは私たち自身のように人間である』ということだ。つまり悪夢は、人間が何をなすことができるかということを、彼らが疑いなく証明したということである」と言いました。その出発点が、民主的で合法的であったということは忘れてはいけないのです。

まして日本において、首相を直接選挙で選びたいと思うことは非常に危険であると私は考えます。まさに新たな権威やヒーロー、あるいは仮想敵の渇望、独裁への欲求そのものと考えるからです。

「鉄のトライアングル」のムラ社会の同調圧力は、前近代的なものとして、解体していかなければいけません。というか、もうすでに少数派となっていて、有権者の一部しか代表していません。何の権威にも属していない有権者が投票に行って納得して投票ができる政治勢力が作られることが必要です。それはもちろんヒットラーのような新たなヒーロー、あるいは仮想敵を有さない、水平的なネットワークが必要となるでしょう。

自民党の総裁選挙は、どうやら河野太郎氏が優勢のようですが、自民党政治が政・財・官の「鉄のトライアングル」のムラ社会の同調圧力に依存していて、いずれもがツーカーの意思疎通によって、新自由主義に傾いているのですから、河野太郎氏がSNSを駆使したとしても、政策が大きく変わることはないでしょう。日本は議院内閣制(実態は官僚内閣制)によって首相は議員により間接選挙で選ばれ、特定の個人に権力が集中することはありません。しかしながら自民党は有権者が第一党として選んでいる政党であることは事実です(良し悪しは別として)。その政策を支持しないのであれば、また、民主党に戻りたくないのであれば、支持政党を持たない有権者の受け皿となる政党を作って、「鉄のトライアングル」のムラ社会の同調圧力を解体していって、政権交代を目指すしかないのです。



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