不倶戴天の敵に助けられたムラヴィンスキー(Echotamaのブログ)

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先日の投稿「骨肉の争い(ロシアのウクライナ侵攻)」で、ロシアとオーストリアは不倶戴天の敵で、ウクライナの西部は元オーストリア領だったということを書きました。しかし、例外的にオーストリアと懇意だった純粋ロシア人音楽家がいます。指揮者のエフゲニー・ムラヴィンスキーです。20世紀の伝説的な「最恐」指揮者です。

エフゲニー・ムラヴィンスキー

妥協を一切許さず、各パート毎に執拗に反復練習を繰り返し、完璧の上にも完璧を目指していたそうです。おそらくチャイコフスキー交響曲第4番の冒頭の金管だけでも数えきれないほどのパート練習を重ねているのでしょう。そして紡ぎだす音楽は、消え入りそうなピアニッシモから雷鳴の様なフォルティッシモに至るまで、緊迫感がみなぎり、一糸乱れず、次元の違うドラマとなっているのです。

今あらためてチャイコフスキー交響曲第4番、第5番、第6番を聴き、昔母に「ムラヴィンスキーのCDを誕生日にプレゼントするよ」と言ったとき「もう頭に入っているからいらない」と返事をされたことを思い出しました。ムラヴィンスキーを聴くと、それが基準のど真ん中の地位に君臨して、確かに一度でも聴けば記憶に深く刻み込まれてしまうのです。

ムラヴィンスキーはウィーンフィルを振ることはありませんでしたが、重い心臓病を患い、ソ連内で手術が不可能とわかったとき、オーストリア・ウィーンでの治療を勧められ手術を受けています。その高額な治療費は全額ウィーン楽友協会が負担したとのこと。いかにムラヴィンスキーが評価されリスペクトされていたかがわかります。

不倶戴天の敵であっても、文化を守るという効用が勝ったのです。効用は直接金銭的なものでなくても、秤にかけて合理的に選択し、最大化することができる。ウクライナとロシアも話し合いによる効用の最大化は可能である。私はそう信じています。



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